はじめに

純資産30億円未満の投資信託は赤字?

だいぶ昔の話になるので私の記憶も曖昧なのですが、今の財務省が大蔵省と呼ばれていた当時、ある大蔵官僚が投資信託の純資産総額と、そこから得られる収益、運用や管理、販売などに係る諸経費を計算し、「株式型投資信託は純資産総額が30億円未満になると、それを運用している投資信託会社にとって赤字要因になる」ということを、ある集まりで話したと、投資信託業界内で軽く話題になったことがありました。

当時の信託報酬率は、株式型投資信託で年2%超取っているものが大半だったので、昨今のように信託報酬率がさらに低下している状況のもとでは、損益分岐点のハードルはもっと上がっているかも知れません。

仮にこの計算が正しいとすれば、純資産総額が30億円未満の投資信託は、投資信託会社にとって運用する意味がないことになります。投資信託会社はあくまでも民間企業であり、収益を生み出さなければ会社の存続そのものが危うくなりますから、それは当然のことです。

もう少し詳しくデータを見てみましょう。純資産総額が10億円未満だとしても、直近設定であれば、徐々に純資産残高が積み上がっていく可能性があります。

純資産総額が10億円未満の投資信託の本数は1,607本ですが、このうち運用期間が5年以下のものは569本です。ということは、1,038本の投資信託は運用開始から5年超が経過しているにも関わらず、純資産総額が10億円未満なのです。この1,038本の投資信託に関しては、恐らく販売金融機関の窓口で顧客対応をしている人ですら、自社で販売していることを知らないのではないでしょうか。

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