はじめに

老後資金準備を考えると、今より家賃を上げるのは厳しい

ここまでは、金融機関から借りられる金額について試算しました。次に、ムリなく返済することが出来る借入額について考えてみましょう。

ご相談者の経済的な目標には、住宅購入以外に老後の生活費準備があります。住宅ローンの返済をしながら、老後資金準備をしていく必要があります。

総務省統計局が調査した「家計調査報告」の2020年(令和2年)平均結果の概要によると、65歳以上の単身世帯における平均的な支出額は、13万8,542円です。ご相談者の現在の生活費は、ボーナスも含めて計算すると、月平均28万7,000円を何かしらに使っていることになります(貯蓄が月1万円、ボーナスから0円ですので、それ以外は全て何かしらで使っていると判断し、カーローン以外の生活費を合算すると月々19万2,000円×12ヶ月=230万4,000円。ボーナス年間114万円。これらを足して12ヶ月で割りました)。

お仕事をされている時よりも、リタイア後の方が生活費は抑えられるかと思われますが、そこまで大きく生活感を変えることは出来ないので、仮にリタイア後の生活費の目標を20万円とします。

平均年収500万円の方が65歳以降受け取れる公的年金の額は現行の制度で試算すると、約14万円/月程度です。リタイア後の生活費目標との差額が月々6万円程度となるので、仮に90歳まで生きると仮定すると、

6万円×12ヶ月×25年間=1,800万円

65歳のリタイアまで1,800万円程度準備する必要があります。現在43歳ですので、約20年間で1,200万円程の準備と考えると、年間60万円は最低でも貯蓄する必要があります。ご相談者の場合、今よりも月々4万円の貯蓄を増やす必要があります。

今の住居費が5万9,000円/月ですので、住宅ローンを組んで今よりも住居費を下げるのは現実的ではありません。

住宅購入の前に支出の改善は必須

すなわち、そもそも住宅購入の前に生活費の改善をしないといけないと考えられます。月々の生活費の内容はそこまで大きく改善の余地がないので、ボーナスの使い道を整理しましょう。仮にボーナスから約50万円の支出削減が出来たとしても、住宅ローンの返済を5万9,000円程度に抑える必要があります。

借入額1,600万円 変動金利0.5% 返済期間25年 月々返済5万6,747円
ですので、中古マンション程度の購入に留まるかと思われます。

まずは、カーローンの返済計画を立て、今の生活費と老後の生活費を整理した上で、シミュレーションを作成しましょう。安易に金融機関で借りられる額をベースに住宅購入をすると、思わぬ生活改善が必要となり、思っていた生活が実現出来なくなってしまう恐れがありますので、要注意です。

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