はじめに
医療保険がある方がいい場合はどういう人?
医療費の自己負担額と、民間の医療保険に支払保険料とを比べて、「損得」だけで考えるのはナンセンス、というお話をしました。なぜなら、それらは全て結果論であるからです。
一生涯、高い保険料を支払って、結果として、ずっと健康で、一度も民間の保険を活用しなかった人がいたとしたら、それを「損」だと考えるかもしれませんし、無保険状態で、大きな病気で長期の療養が必要になり、自己負担額で圧迫されるケースも、残念ながらあるでしょう。
いずれにしても保険は、「お守り」としての側面もありますし、「安心料」と考える人も多いから、現在の加入率に繋がっていると思われます。
では、民間の医療保険があると良いと考えられるケースはどのような必要なのか。いくつか例を挙げてみましょう。
■結婚
独身であれば、全てが自己責任といえますが、結婚をしてパートナーができた場合。相手の人生も関わりますから、医療費に限らず、「経済的な負荷」はパートナーにも及びます。
そのため、万が一の場合の「リスクヘッジ」が自分のためだけではなく、「家族のため」と、考え方が変わる時期でもあります。
家を購入したり、子どもができて教育資金を貯めている場合など、一度の病気で、貯蓄額が激減してしまわないように、少なくとも現役時代(定年退職前)は、万一の場合に備える必要性はあるでしょう。
■妊娠
通常分娩であれば「病気」という扱いではありませんので、公的医療保険を含め、民間の医療保険の対象にはなり得ませんが、帝王切開などの異常分娩の扱いであれば、その限りではありません。
出産は、リスクを伴うことも確かですから、万一の場合の備えをする人は多くいます。
注意点として、妊娠・出産時の医療保障を考える場合は、妊娠前に加入されることが重要です。仮に妊娠中に保険加入をする場合は、多くの場合「特定部位不担保」といって、「今回の出産」に関しての保障が対象範囲外となったり、保険会社によっては、「次回以降の出産」も対象外(保障を受けられない)場合があります。
■貯蓄がない人
高額療養費制度の自己負担額が、仮に月額 8万7,430円で収まったと仮定しても、それが何ヵ月も続けば、負担額が増大します。お金が無いから満足な治療を受けられない、とはなりにくいですが、治療費だけが人生の出費の全てではありませんので、自己資金が少ない人は、最低限のリスクヘッジが必要と考えられます。
逆に、十分な貯蓄があれば保険は不要、という考え方も決して間違ってはいません。資産形成の途中は保険でしっかり守り、十分な貯蓄が出来たら保険を止める=自己資金で守る、という計画は、優れた考え方だと言えます。
本文でも触れましたが、「結果論」と言えるものに対して、「損得勘定」は持ち出しにくいものです。
だからこそ、誰にも分からない未来を歩んでいく我々が、何かがあった場合に守ってくれる装置、を用意することは重要です。その装置を、「自己資金」で備えるか、「保険」という財布を用意するか。
考え方は人それぞれですから、どちらが正解かは示しにくいですが、検討材料として、今回の記事が参考になれば幸いです。