はじめに
選択肢を考えておくことが重要
住宅ローンの借り換えをすることで返済負担は軽減されるものの、このままでは老後の暮らしへの不安が残ります。とはいえ、Aさんは51歳ですから、いくらでも軌道修正は可能です。具体的にAさんに提案した対策を挙げてみましょう。
まず早急に行なっていただきたいことは、老後資金作りです。Aさんの勤務先の退職金制度は退職一時金だけなので、iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用すれば月2万3,000円の拠出ができます。2022年5月からiDeCoの加入年齢が原則65歳まで拡大されるのも朗報です。今す始めて65歳になるまで加入できれば、これから14年間拠出ができますからまとまった老後資金が作れます。
仮にiDeCoが2%の利回りだと445万円ほどになり、年収に応じた節税メリットもあるのでその分も貯蓄に回せます。今の家計収支を見直し、iDeCo以外にNISAといった優遇制度も併用して老後資金作りを進めていくことが重要です。
また、住宅ローンについては、借り換えを検討すること、そして、返済を続けていくのであれば長く働き続けることも有効です。2021年4月に一部の会社が対象ではありますが、「70歳までの就業機会の確保」が努力義務化されました。これに伴い、雇用環境は変化していくでしょうから、勤労収入を得ることと公的年金を繰り下げ増額することを両輪で考えておきましょう。
最後にお伝えしたことは、マイホームについての考えです。Aさんは独身ですので、住宅を誰かに遺したいという意思がなければ、リバース60といったローンを利用するのも一考です。返済は利息だけなので月々の返済が少ないことや元金の返済は死亡時の一括払いといったメリットがあります。一方で借入限度額が低いことや元金を返済しない限り返済が続くといったデメリットもありますが、選択肢として今後検討をしても良いでしょう。
人生を100年で考えたら、Aさんはようやく折り返したところです。今後、働き方やそれに関わる制度は変化していくでしょうから、時機に応じてより良い対策が出てくる可能性もあります。柔軟な思考を持って対応を考えていきましょう。