はじめに

「もうここまでか…」を救ってくれたのは株主優待だった

そして2005年かな、小泉元総理の郵政民営化という無茶苦茶な解散をしたら自民党が大勝しました。政権が安定したことで、外国人がどんどん株を買い、株価が非常に高くなりました。

そのとき、私は非常に利益を得ました。その頃、『日経マネー』という雑誌に「資産3億円ぐらいで悠々自適の桐谷さん」みたいな記事が載り、さらに有頂天になりまして。

2007年に現役引退して「これから将棋の勉強しなくていいから株を一生懸命やろう」と思いました。そして、信用取引にのめり込んでいったんです。

ところが2007年に、サブプライムローン問題が起こりました。これはアメリカで発生したんですけども、あまり収入がない人もとりあえず住宅を買ってローンをつけて、値上がりを待てばいい……という手法が取られていました。住宅ローンバブルが起きたんですね。どんどん住宅も値上がりして、あまり所得のない人もとりあえず借金して住宅を買ってローンを払うようなことをやっていた。

しかし、やはりバブルはいつの時代でも崩壊するんですね。それがサブプライムローン問題です。2007年にアメリカで大変なことが起こったわけです。

ところが日本の評論家は「あれはアメリカの問題だからたいしたことない」と言うんですね。しかし、アメリカより日本のほうが株価の下がり方がひどかったんです。そういうことがありまして、私もだいぶやられました。

リーマンショックから世界恐慌へ

2008年の初めに『日経マネー』の別冊本で株主優待が出ました。

その表紙をめくったら、私の部屋の優待品がカラーの見開き2ページにびっしり載っているんですね。当時は信用取引のやりすぎで3億ぐらいあった金融資産が1億3000万に減りましたから、「これからもう信用取引やめて株主優待専門のほうでいきます」という記事が載ったんですね。

ところがちょうどその頃にアメリカで、全米第5位の投資銀行ベアー・スターンズが潰れそうになったんです。潰れると銀行とか保険会社とかいろんなとこに影響が出ます。だから、その会社の株が紙切れになるんでアメリカ政府が助けたんですね。

助けたら株価がビューッと戻っていったんです。当時の私は信用取引をやめようと思ってたんですけど、株が戻っている様子を見て「やはり損したままじゃ終われない」と思ってしまったんです。

そして今度は、9月15日に全米第4位の投資銀行リーマンです。アメリカ政府が助けようと思っていたのですが、手違いがあって潰れてしまったんです。そして世界恐慌が起こってしまったんですね。

私は命一杯かけて信用取引やっていたんで、また死にそうになりましてね。ほとんど死にかけたんですけども。。

手元に残っていたのは株主優待券だけ

というように、いろんなことがありまして。もうお金がなくなりました。

将棋は引退しているし、まだ厚生年金も入ってこない。本当に困りまして、行き詰まってどうしようかと思っていたんです。東京の家賃も払えないから田舎に帰ろうかなと思ってたら、幸いに株主優待のある会社の株をたくさん持っていたんですね。

優待品がどんどん来るんです。東京に住んでいると優待券が使えます。けれども、田舎に引っ込むと株主優待券が使えない。そのため、何とか東京で頑張ろうと思いました。

当時、家賃が13万ぐらいだったんですけども、株の配当がいくらかあったのと、優待品が来る。家賃と公共料金は現金で払わなければならないんですけれども、それ以外は一切お金を使わない生活を数年間やっていたんです。

そうすると、たまたまテレビに取り上げていただきまして。ありがたいことに視聴率もとれて、いろんな講演の話なんかも来ました。ですから、株主優待によって救われたんですね。

何度も死にかけたから語れる「優待株の分散投資のメリット」

私は33年間株式投資をやってきました。いいときもあれば悪いときもありました。

やはり値上がりを狙って株式投資をするのはギャンブルに近いです。特に信用取引なんていうのは猛獣狩りをやっているようなものなんですね。うまくいくと獲物が捕れて腹一杯お肉も食べられる。

しかし、時々狙った鉄砲の弾とか外れちゃうわけなんですね。そうすると猛獣は襲ってきます。私は、何回もあちこち噛まれて死にそうになっちゃったんですね。バブル崩壊とか山一證券が潰れたとき、リーマンショック、日本航空が潰れたときなど、何回も死にそうになりました。

私の今の考えは、優待株の分散投資がいいと思っています。

先ほども言いましたように、株をちょっと持っている人は一番利回りが高いんですね。ちょっと持っててもたくさん持ってても同じQUOカードが2,000円分、同じ飲食券が3,000円など、そういう具合になってます。そこで私は、優待株の分散投資が一番いいんじゃないかなと気付きました。

大きなチャンスには大きな失敗がつきもの

優待は、農業と似ているんですね。農業は種をまいて肥料をやったり水を掛けたりしなきゃいけない。しかし、定期的に収穫がある。年に1回とか、あるいは2回、収穫物をいただけるんですね。そういう農業的な投資方法が一番いいんじゃないかなと思ったんです。

現在は値上がりを狙った投資をやっていませんし、優待株の分散投資をやってます。

歴史を見ると、人類も最初は狩猟採集で暮らしていたんですね。しかし、狩猟とか採集、木の実を採ったり動物を捕まえたりしても、安定的に収穫物は採れないんです。うまく採れるときがあれば、失敗してひもじい思いをすることもある。そのため、なかなか文化文明が発達しなかったんですね。

ところが人類は1万年ぐらい前から農業を覚えて、定期的・計画的に食べ物が生産できるようになりました。そこから文明もどんどん発達しているんですね。

それで値上がりを狙った投資よりも、優待株の分散投資が一番いいんじゃないかという結論に至りました。今は自分でもそういう投資をやっていますし、みなさんにもすすめてます。

大きな儲けは本業や生活に支障をきたす可能性も

私は2007年まで将棋のプロ棋士でしたが、棋士仲間も多くの人が株式投資をやっていました。バブルのときはみんな儲かるから、「俺は天才だ」と思ってたんですね。

ところがバブル崩壊してみんなやられました。将棋には順位戦という給料に関係ある対局が1年間に10回あります。10回やった結果で、上のクラスに上がったり降級したりするんです。つまり、給料が上がったり減ったりするんです。バブルが崩壊した年は、信用取引で1億円ぐらい損したうえ、将棋の方でも10戦全敗しました。。

将棋の先輩で、フォーバル(旧・新日本工販)の株で数億円ほど儲けた人がいたんですね。その先輩はけっこう上のクラスにいたんですけど、何億か儲けたらばあーっと将棋の成績が下がってきて、一番下まですぐ落っこっちゃったんです。というのは、金が儲かりすぎてうれしくて、将棋に打ち込めなくなっちゃったんですね。

ですから、我々将棋のプロ棋士に限らず、仕事をしておられるみなさんは、値上がりを狙った投資で儲けても本業が疎かになるし、失敗しても金策に走り回ってとても仕事を安心してやれるような状況ではなくなります。ですから良くないんです。株式投資する場合でも、優待株の投資が一番いいと思いますね。

現在、配当と優待合わせて4%以上の利回りがある株はたくさんあります。そういう株に100株ずつ分散投資するのが一番利回りもいいし、楽しいと思います。投資信託をお買いになるのも非常にいいんですけども、そういう優待株の分散投資が自分は一番いいし、ぜひみなさんにもやっていただきたいですね。

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