はじめに

リスクはどこかで必ず取らなければならない

お金持ちになるためには、どこかで何らかのリスクを取らなければならない。不動産を相続した人であっても、何らかの収益施設を作った段階で事業リスクを負う。ましてや、お金のない状態からお金持ちになろうという場合には、それなりのリスクを覚悟する必要がある。

儲けるためには集中投資も必要

世の中では、リスク分散が絶対的に正しいことのように言われているが、そうではない。

以前、株式投資にチャレンジしようとしている人に対して、少ない銘柄に集中して投資するようアドバイスしたことがある。その投資家は、元手が500万円。数年で2倍から3倍にしたい、という強い希望を持っていた。そのためには、かなりのリスクを取らなければならないし、元手がゼロになってしまう可能性がある。だがそれでもチャレンジしてみたいという。株式の平均的リターンは6%くらい。だが急上昇が期待できる銘柄に集中投資すれば、リスクはあるが2~3倍も夢ではない。

ここで文句を言ってきたのが、ファイナンシャルプランナーの資格を持つH氏であった。ボートフォリオ理論に基づいて分散投資をしなければ危険だと彼は言う。自分もリスクとリターンを計算してポートフォリオを組んでいると。

筆者は異なる考えの人に対しても、きちんと論理が通っていれば、意見そのものには敬意を払う主義だ。だがこのときは、H氏の自説が正しいという上から目線の姿勢が目に余ったので、厳しく指摘した。

筆者「分散投資が重要なことはわかっています。ところであなたは、いくら投資しているのですか?」

H氏「そんなに、多くはないです」

筆者「金額が問題なんですよ。ちなみに私は1億円を運用しています」

H氏「いや、私はそれほどは……」

筆者「ポートフォリオを気にされるのですから、5000万ってことはないですよね?」

H氏「…」

H氏の運用金額は約100万円だそうである。100万円を株式で、しかもリスク・リターンを計算するといった相当の手間をかけて運用し、数%のリターンを得て、彼は何をしようというのだろうか? その程度のリターンでよいなら、私なら迷わず定期預金に預ける。

ポートフォリオはお金持ちのための理論

H氏はリスクの意味も、ポートフォリオの意味もわかっていない。ポートフォリオを組んで意味があるのは、億単位以上のお金を運用する投資家だけである。このクラスの人にとって大切なのは、資金をなくさないことと、インフレで価値が目減りしないことだ。このため、数%のリターンを常に確保し、個別銘柄の影響をできるだけ受けないようにするためにポートフォリオを構築する。

3億円のお金を銀行預金にしてしまうと、定期でも100万円から150万円くらいにしかならない。しかし、5%で運用すれば、毎年1500万円の収入になる。それだけで十分に暮らしていける額だ。つまり、このクラスの投資家にとって、お金をできるだけ減らさず、5%で運用することは、とてつもなく大事なことなのだ。

だが100万円の投資家はどうだろうか? 100万円を5%で運用して5万円のリターンが毎年得られることと、定期預金に預けて年数千円のリターンを得ることが、天と地ほど違うことだろうか?

本気で儲けようと思うのなら、時には集中投資も必要である。先の彼は、2倍、3倍にしたいという明確な目標を持っていた。その後、彼は1.5倍には増やすことができ、それを元手にサイドビジネスを始めた。彼なら事業であれ投資であれ、十分に正しい決断を下していけるだろう。

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