はじめに
会社員との格差、どう対策する?
それでは、フリーランスの方はこれらの条件に対し、どのような対策をしていけばよいのでしょうか?
生命保険の活用
遺族年金や障害年金が会社員に比べ少ないフリーランスですが、これらの保障については生命保険の商品を利用することで、公的保障とは条件が異なりますが同様の状態になった際に保障を受けることができます。また、近年では傷病手当金の代わりとなる就業不能保険や所得補償保険といった商品もあります。働けない場合の備えを医療保険の入院給付金で行うという考え方もありますが、近年においては入院も短期化しており、収入の補填に対処しきれない場合も想定できるため、これらの保障の活用を検討するとよいでしょう。
小規模企業共済やiDeCoの活用
公的年金の少ないフリーランスは、老後の資産形成のための制度として「小規模企業共済」という制度を利用することができます。掛け金が全額所得控除となり、税金をお得に老後の資金を積み立てることができる制度で、ご自身で事業を営んでいる、もしくは一定の基準を満たす法人の役員でないと加入することができません。
また、iDeCo(個人型確定拠出年金)も拠出できる掛金の上限額が会社員の方に比べ大幅に拡大されており、厚生年金に加入することができない代わりにそのような制度を利用し会社員の方と比べ乏しい公的保障を補うこができます。その他、国民年金基金等の制度もありますので、目的に合わせて有利な制度を選び、組み合わせて活用していきましょう。
法人設立
フリーランスの立場でも、法人を自身で設立し、役員となることで厚生年金、健康保険に加入することができます。法人設立というと利益が大きくなった際に節税のために設立するというような話を聞きますが、社会保障が拡充されるという面でも有利になります。
役員報酬を増やすと社会保険料が高くなるため、収益が少ない頃にはフリーランス時の所得と同等の役員報酬を設定すると、社会保険料が高額になってしまうこともあります。しかし、役員報酬を調整することで社会保険料も抑えながらも公的保障を手厚くし、会社員に近い社会保障を得ることも可能ですので、収益が出ていなくても十分にメリットを得られる場合もあります。
ただし、フリーランスの頃よりも決算や税務の面で手続きが複雑になることもあるため、それらの費用も含めて検討することが必要です。
ここまで、会社員とフリーランスの社会保障の差と、その不足分をどのように補うことができるかを解説してきました。
普段はなかなか必要性を感じることの無い公的保障ですが、老後を迎える頃や万一があった際には大きな差になり、それを知らずにフリーランスの立場を選ぶ方もいらっしゃいます。
組織に所属せずに自分のペースで仕事を請け負っていく生き方は、時間的な自由とやりがいも得ることができることでしょう。しかし、ご自身やご家族のためにもこのような社会保障の差を認識し、対策しておくことをお勧めします。