はじめに

定年後に「第二の退職金」をつくる

iDeCoの老齢給付を受け取った場合は、iDeCoへの再加入ができないと前述しましたが、企業型DCの老齢給付を受け取った方はiDeCoへの加入が可能です。同様に、iDeCoの老齢給付を受け取った後に、企業型DCに加入することも可能です。

例えば60歳で企業型DCの加入資格を失ったと同時に老齢給付を受け取った後でも、加入条件を満たせば今度はiDeCoに新規加入できます。65歳までの5年間で新しく200万円の退職所得控除を作ることができるので、第二の退職金づくりに有効です。

ここで少しiDeCoのメリットである一括受取の際の退職所得控除について補足します。退職所得控除は、勤続年数に応じて計算されます。勤続20年までは1年あたり40万円、勤続20年超については1年あたり70万円で計算します。iDeCoの場合は加入期間を勤続年数と読み替えて計算しますが、企業型DCの場合は会社の退職一時金と同時に、確定拠出年金の老齢給付を一括で受け取ることで、このメリットを有効活用する場合も少なくありません。

仮に会社の勤続年数が38年とすれば、退職所得控除は2,060万円です。ここで、退職一時金が1,500万円で企業型確定拠出年金の老齢給付が500万円というケースでは、退職所得控除の枠を無駄なく使いきるために、確定拠出年金の資金を一緒に受け取った方がメリットは大きくなります。

今回の法改正は、このような形で企業型DCを受け取った方がiDeCoへ加入することを可能にしました。これにより退職所得控除を使いきってしまった後でも、新たな加入期間で新しい退職所得控除を作れるようになります。

例えば、60歳以降iDeCoに新規で5年加入すると、退職所得控除は200万円となります。月々23,000円の積立を5年続けると138万円ですから、仮に運用益がのったとしても、65歳以降に老齢給付を一括で受け取る際に200万円の退職所得控除を使えますから、結果として非課税で全額受け取れる可能性が高いと言えます。

老後の生活設計をトータルで考える

iDeCoは税制優遇がとても優れているので、つい損得勘定が先に立ってしまいますが、もっとも重要なことは老後の生活設計をトータルで考えることです。

50歳以上の方が受け取る「ねんきん定期便」は、60歳までの年金加入を想定し、より現実的な見込み額が記載されているので、公的年金の受給開始年齢、繰上げなのか繰下げなのか、も含め計画をします。また今後の働き方、会社の企業年金や退職金の有無、貯蓄額を含めたキャッシュフローも考慮します。

結論として、iDeCoは老後の生活設計の一つのパーツですから、目先の損得にとどまらず上手に活用していただきたいと思います。

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