はじめに

ケース1:相談者に万が一のことがあった場合の遺族保障について

まず、ご相談者が亡くなった場合ですが、予想される収入等と支出のおもなものは以下の通りです。

【万が一のときの遺族の収入・貯蓄】
・公的遺族年金
・勤務先からの死亡退職金・お見舞い金
・民間保険の死亡保険金
・遺族(妻)の収入
・貯蓄

【万が一のときにかかる支出】
・遺族の生活費:(1)末子独立までの生活費:現在の基本生活費×70%×末子が独立するまでの年数が目安+(2)末子独立後の配偶者の生活費:現在の生活費×50%×89歳※―末子独立後の配偶者の年齢が目安
・子どもの教育費
・死亡整理金(葬式代など)

※厚生労働省「令和2年簡易生命表」の60歳時点の女性の平均余命29.46年より

遺族の収入の中心となる「公的遺族年金」

とくに、遺族の収入の中心となるのが公的遺族年金です。公的遺族年金には、18歳未満の子どものいる配偶者または子どもが受け取れる「遺族基礎年金」と厚生年金保険に加入している被保険者が亡くなった際、その人が生計を維持している遺族が受け取れる「遺族厚生年金」があります。

遺族基礎年金は、定額で約78万円。さらに子の加算が約22万円プラスされて、これだけで年間100万円。ご相談者には、お子さんが2人いらっしゃいますが、長女は20歳ですので、「年金上の子」に該当せず、長男1人分です。

遺族厚生年金は、収入等によって金額が異なります。金額の目安は、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分(在職中の給与や賞与の金額、加入期間に比例して支給される年金)の4分の3です。ちなみに、標準報酬月額が40万円の場合、遺族厚生年金は約49万円となります。

ただし、厚生年金保険の被保険者期間中の平均の標準報酬月額を計算することは難しいため、年金事務所で照会してもらうか、毎年送られてくる「ねんきん定期便」をご活用ください。老齢厚生年金の支給見込額がわかれば、遺族厚生年金の額も確認できます。

遺族厚生年金は、再婚するなど、「遺族」に該当しなくなるまで受給できますが、遺族基礎年金は、子どもが18歳に達した後は終了します。その代わりに40歳以上の妻が65歳になるまで受給できるのが「中高齢寡婦加算」です。そして、妻が65歳以降、妻自身の老齢基礎年金+遺族厚生年金の組み合わせとなります。

公的年金は、「老齢」「障害」「遺族」という3つの支給事由がありますが、1人1年金の原則に基づき、本来は1つしか選択できません。ただ例外として、65歳以後、支給事由の異なる2つの年金が受けられる場合があり、このケースがこれに該当します。

以上を踏まえて、遺族が受け取れる公的遺族年金のイメージは【図表1】の通りです。

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