はじめに
割高か割安かを見極める方法について、今度は南アフリカランドを例に見てみましょう。図表3は2010年以降の南アランド/円のチャートです。2010年頃までは1ランド=12円以上で推移していたのが、ここ数年は上がっても、もう10円すら超えられなくなっていることがわかるでしょう。
【図表3】南アフリカランド/円の推移 (2010年~)
(出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成)
メキシコペソでも確認しましたが、このように中長期的に通貨の価値が下落するのは、利回り狙いの対象となる高い金利の通貨、言い換えれば「インフレ通貨」の特徴と言えるでしょう。だからこそ、繰り返しにはなりますが、こういった高金利通貨ほど、買う水準の吟味、つまり割高水準での買いを避け、なるべく割安な水準で買う意識が非常に重要となるのです。
南アランドが大きく下落に向かったことから、結果的に「買ってはいけなかった」のは赤丸印、一方買って中長期保有により高い利回りのメリットをしっかり享受できたのは緑丸印のところだったでしょう。次に図表4を元に、5年MAからのかい離率で見ると、赤丸印は基本的に5年MA前後の水準、一方緑丸印は5年MAを3割近く下回った水準でした。
【図表4】南アフリカランド/円の5年MAかい離率 (2010年~)
(出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成)
つまり南アランド/円の場合は、5年MA前後が割高警戒域、一方5年MAを3割近く下回ってくると割安感が強くなると言えそうです。この10年余りで見ると、とくに南アランド/円は5年MAからの割高、割安サインが、比較的きれいにでていたことがわかります。
この5年MAかい離率は、中長期的な割高、割安を判断する分析方法の一つです。必ずしも今回見た南アランドほどきれいなサインとなるわけではありませんが、大まかな目安にはなります。
高金利通貨のトレードは、金利差収益への期待が強いのは当然でしょう。ただこれまで見てきたように、そんな高金利通貨ほど、中長期的には価格下落リスクが大きいのが基本ということがあります。
以上からすると、金利差収益期待の強い高金利通貨トレードこそ、せっかくの金利差利益を台無しにしないように、実は循環的な割安、割高の確認が必要なのかもしれません。