はじめに
不動産投資と老後資金の関係
家賃収入は魅力的な言葉であり、これがあるから不動産投資は老後対策に向いているとの考えがありますが、基本的にそんなに簡単な話ではありません。これはシンプルな話で、皆さんが老後を迎える時は物件もそれなりに年数が経過しているため、満足な家賃を取れるかわかりません。むしろマンションやアパートの修繕積立金が年々上がるように、経年劣化による維持・管理のコスト増加を想定しても不思議ではありません。
また、基本的には物件そのものの価値は、築年数と共にどんどん下がっていきます。いざ「売ろう」と考えたときに、期待していたほどの金額にならないことはよくあります。しかも不動産価格は将来のその時にならないといくらになるか相場が全くわかりません。あるのは予想だけです。
不動産投資は物件を買って終わりではなく、買った物件の維持や管理、そして物件の入れ替えを計画的に行っていかなければなりません。
不動産、自宅用と投資用での考え方の差
不動産を自宅用として購入した場合、考えなければいけないことは、収入や資産と住宅ローンのバランスです。では、不動産投資の場合はどの数字を見るのか。それは複数ありますが、絶対に確認しないといけないことは家賃と物件価格の利回りです。
例えば物件価格が2,000万円、年間の家賃収入が100万円の場合、利回りは下記のように計算します。
家賃収入:100万円÷物件価格:2,000万円×100=利回り:5%
ここで計算した利回りを「表面利回り」と呼び、物件検討の際は最低限計算して、テーブルに乗るかどうかを考える必要があります。利回りは物件ごとに異なりますが、属性ごとにある程度の幅に集約されがちです。その中でいま目の前の物件利回りが状況を加味した場合どうかが感覚的にわかるようになることは重要です。
なお、利回りには経費などを含めた「実質利回り」もあります。こちらは「(家賃収入-諸経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100=実質利回り」と計算し、より実態に即した利回りを計算できます。新築物件の場合は、設備も新しいのでメンテナンスのコストが低く、管理費などもまだ決まっていない場合もあるため、諸経費などを含めない表面利回りを用いるケースが多いです。
ちなみに筆者であれば、新築区分所有で表面利回り5%物件が目の前にあったとしても検討にも上がりません。理由は不動産ローン金利や諸経費など、実質利回りを考えた場合に収支がマイナスになる可能性が高いと感じられるからです。
不動産に限らずですが、投資を検討する上でマイナスの可能性が高い先に投資しようとは思えないのは、皆さんも同じではないでしょうか?
不動産投資は多額の現金や借り入れが必要になるため、致命的な失敗をするとリカバリーが困難になることがあります。そのような状況にならないためにも、マイナスを前提とするような「罠」にかかることなく、しっかりと利回りを考え、見分ける力をつけておく必要があります。
世の中そんなに簡単に楽をしてお金が手に入ることはありません。経済的な安心を手にするために、判断できる知識をつけた上でチャレンジしてください。