はじめに
「演繹法」と「帰納法」の違いを理解する
論理にはこの他に、「帰納法」というものがあります。これはさまざまな事実を積み上げ、その結果としてこ ういうことが言える、と導くものです。
たとえばショウガが風邪に効くという結論を導くのに、以下のような論法を使う人もいるでしょう。
「風邪を引いたらショウガ湯を飲んだら楽になる。知り合いが言っていた。先日のテレビでも、ショウガ湯で風邪が治ったと言う人がいたし、東洋医学でも風邪にはショウガ湯を飲むことを勧めている。だから、風邪にはショウガが効く」
多くの事実を列挙して、そこから一般的な結論を導くというやり方です。統計学などはこのような推論の仕方で成り立っている学問と言えるでしょう。
私たちの日常会話でも、このような帰納的な推論、論法で話をしている人がけっこう多いのではないでしょうか。
しかしながら、当てはまる事実や事例が多いからと言って、必ずしもそれが一般論として正しいかどうか確定 的に言うことはできません。一つでも反証や反例が出たら、その論拠は危うくなります。
より科学的なのは演繹法の方だとも言えますが、仮にショウガが風邪に効くと言いたいとしたら、以下のような3段論法があり得るでしょう。
「ショウガ湯を飲むと体温が上がることが知られている。一方、体温が上がると免疫力がアップするという研究がある。だからショウガ湯を飲むことで免疫力が上がり、風邪に効くと言える」
演繹法も帰納法も、論理的に話をするときには有効な方法です。また、文章を読むときも、これらを意識しながら、書き手がどのような論理構造で話を展開しているかを把握することが大事になります。
その際、これは演繹的な手法を使っているなとか、帰納法的な論旨展開だなと分析しながら読むことで理解が深まります。
演繹法にしても帰納法にしても、読解力をつけるには数学力=論理力が不可欠です。それによってテキストの内容をしっかりと読むことができるようになります。
まず、この論理的に読む、ロジカルに読むということが「読解力」には必要です。論理的にテキストを読めなければ、当然文意を正確に理解することは不可能です。
接続詞を正しく使う
文章を読み解くのに、もう一つポイントになるのが接続詞です。接続詞があることで、文のつながり方がわかり、理解がしやすくなります。
たとえばこんな具合です。
「私は今年で50歳になる。だから、健康にますます注意しなければならない。しかし、相変わらず飲みすぎてしまう癖がある。というのも、酒を飲み始めたら酔っ払うまでセーブすることができない。ただし、酒を飲むのは自宅ではなく外がほとんどだ。したがって、これからはできるだけ外食を控えて、酒を飲む機会や場面を減らすことを目指している」
接続詞は主に6種類あります。
1・順接
「だから」「それで」「ゆえに」「そこで」「すると」「したがって」「よって」
2・逆接
「が」「だが」「しかし」「けれど」「けれども」「だけど」「ところが」「とはいえ」「それでも」
3・並列・付加
「そして」「それから」「また」「しかも」「その上」「さらに」「なお」「かつ」「および」
4・言い換え・補足
「つまり」「すなわち」「なぜなら」「たとえば」「ただし」「ちなみに」「要するに」「いわば」
5・対比・選択
「または」「あるいは」「それとも」「そのかわり」「むしろ」「ないしは」「いっぽう」「もしくは」
6・転換
「さて」「ところで」「では」「それでは」「次に」「ときに」
それぞれの働きをしっかりと認識し、文の流れを追うことでロジカルな理解ができるようになります。
ただし、気をつけなければならないことがあります。接続詞をあまりに多用すると、表現がくどくなり、むしろ読みにくい文章になってしまうことです。
元新聞記者だった池上彰さんは、接続詞はできるだけ省くことを推奨しています。できるだけ少ない文字数で事実を伝える新聞記事を書いていただけに、くどい表現を避けるというのがあると思います。