はじめに
ロールオーバーでの活用
例えば2019年に120万円を原資として投資をし、2023年の非課税期間終了までに150万円にまで資産が増えたとしましょう。すると、売却をして非課税メリットを享受することもできますが、「もう少しこのまま投資を継続したい」と思う人も出てくるかも知れません。そんな時に利用できるのがロールオーバーです。
2024年はこの150万円の資産を丸ごと新NISAに移します。新NISAへのロールオーバーの際には、2階部分から資金を流入させます。この時、150万円の資金はNISA枠からあふれてしまうのではと思う方もいるかと思いますが、ロールオーバーでは、NISA枠で創った資産はいくら増えていても全額次の非課税期間に持ち越せるのがメリットです。
このケースでは、まず2階部分の102万円枠を消費するのですが、結果的に2024年度の1階部分も含めたNISA枠122万円全てを使いきることになります。そのため新規の投資はできません。
ロールオーバーでは、これまで投資していたものを一旦売って、すぐに買い戻します。従って、取得価格もその時の金額に変わります。例えば先ほどの例の場合、150万円で売って、150万円で買うのでロールオーバーの際は、次の5年間で150万円より増えた場合、その利益が非課税となるという意味です。これは課税口座に移しても取得価格の考え方は同様です。この場合、資産が増えていれば問題ありませんが、値段が下がっている際は注意が必要です。
120万円で買ったものが100万円になった時点でロールオーバーすると100万円が新しい取得価格となり、それ以上に価値が上がれば利益です。つまり120万円に戻ったとしても、それは利益とみなされます。もちろんNISA口座内であれば非課税ですが、課税口座に移した際は「値段がもどっただけなのに」課税されます。そして、ロールオーバーするのか、課税口座に移すのかの選択は、事前にしなければならないというのが非常に悩ましい点です。
ロールオーバーを決めると、年末の価格が売却価格となり、かつ新しいNISAでの取得価格となります。首尾よく値上がりしていればよいですが、そうではない場合もあります。「その時はその時で、余った非課税枠で投資をしよう」と前向きに考えられる人は向いていますが、5年毎に新しい非課税枠で新規の投資を行うのか、これまでの投資をロールオーバーで引き継ぐのか、はたまた課税口座に移すのかの選択は付きまといます。
また新NISAは2028年以降どうなるのかは未定です。現時点では、新NISAの1階部分のみはつみたてNISAにロールオーバーが可能という点のみ決まっています。
「新NISAが始まるまで、待った方がいいですか?」と質問されることがありますが、待つメリットは一切ないと考えます。なぜならば、資産形成で最も重要なことは「時間」だからです。投資による福利効果を高めるためにも投資をはじめるのは一日でも早い方がいいですし、経済成長の恩恵を受けるためにも、投資期間は一日でも長い方か良いからです。
なお、5つ目の変更点の通り、新NISAでは口座開設可能年齢が18歳に引き下がります。成人年齢の引き下げとともに、若年層での金融教育の広がりも顕著ですので、今後ますます資産形成のすそ野が広がるでしょう。