はじめに

円安のデメリット

多様な側面を見ていく上で、まずは円安のデメリットを整理しておきましょう。

円安とは「円の価値が安く」なることですので、エネルギーや穀物などの輸入品への支払いにたくさんの円が必要になってしまいます。つまり、輸入コストが高くなり、輸入産業の業績が落ち込みやすくなります。

企業にもダメージですが、何より個人(消費者)への影響が大きくなる傾向にあります。いま、私たちが直面している「値上げ」は円安による原材料などの輸入品価格の高騰によって、企業がコスト分を値上げしなければならないところまで追い詰められています。

生活者としては「生活必需品の値上げ」などに見舞われています。賃金は変わらないのに、出費は増えてしまいますよね。

食料品やエネルギー価格が所得によってどれくらい影響が異なるか、試算した数値を見てみましょう。みずほリサーチ&テクノロジーズが発表した『政府の「総合緊急対策」の評価 ─ 資源高・円安を受けた物価高による家計負担増を緩和 ─』によると、年収が300万円以下の場合は年間5.8万円の負担増、年収1,000万以上の場合は年8.7万円の負担増というデータがあります。収入に占める割合で考えれば、低所得者のほうが、食料品やエネルギー価格の高騰のダメージを「約2倍」受けやすくなります。

特に、株式などの金融資産を持っていない場合には、資産が目減りしてしまうため注意が必要です。消費者からすると、恩恵よりも生活コストが増えるデメリットの方が大きく感じられるのが「円安」といえます。

円安のときにするべきことは、現金をはじめとした預金以外の「金融資産」を持つことです。日本株式、米国株式、投資信託、米ドルなどの外貨を持っておくことで、手元資金の目減りを防ぐことができます。

円安のメリット

一方で円安のメリットは、どちらかというと個人よりも、企業側の方が大きくなります。企業が利益をだせるならば、日本経済を底上げし、賃上げによる家計の消費にも寄与すると考えているのが、一般的な円安メリットのロジックになります。

円安になると、海外からすれば日本製品が安く買えるようになります。日本製の自動車や電子部品などの輸出製品がよく売れるようになり、輸出産業が活発になります。トヨタ自動車は、1円の円安で400億円のプラスだと言われています。もちろん、輸出産業も海外から資材や部品を輸入することを考えれば、輸出企業もコスト高に見舞われることでしょう。

現在、円安が急速に進んだにもかかわらず、日本株が軟調な理由は、「本当に円安が製造業にプラスなのか?」と懐疑的な人が多いからだと私は考えています。しかし、どこかで「円安は日本企業にメリットなはずだ」とも考えているため、今のような方向性のない、米国株主導の値動きになっているのです。

製造業の筆頭であるトヨタの第一四半期の決算が8月、第二四半期の決算が11月と続きますので、この決算の情報を見ながら、はたして円安は製造業にメリットなのかを確かめたい、という思惑があると見ています。

そして、円安はインバウンド旅行者にとっては、安く日本の旅行ができるため魅力的です。経済再開やインバウンド関連の銘柄は、すでに動き出していますが、入国の人数制限が解除されれば、圧倒的な恩恵を受けることが予想されています。

日本の不動産に目を向ければ、首都圏のマンション価格はバブル期を超えるまでに高騰しています。これは、海外投資家から見た時に、円安効果もあり治安のよい日本の不動産が割安に感じられた結果です。それに加えて、日本だけが「利上げ」をしていない低金利状態ですので、不動産投資にも追い風となっています。

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