はじめに

経済アナリスト馬渕磨理子はこの円安をどう捉えているか

私は、これらの点を踏まえて円安のデメリットを理解しつつも、日本企業が部分的に恩恵を受けている円安の側面に注目しています。製造業の今期の決算情報を待ちながらになりますが、円安が製造業にとってメリットである確信を持てるタイミングになれば、明らかに「日本株=割安」だと認識されるでしょう。米国の利上げで行き場の失ったマネーの矛先が日本に向かうのも時間の問題かもしれません。

最後に、円安で製造業が恩恵を受ける側面があり、工場も国内への回帰が進むでしょう。そして、インバウンド需要では、安い日本のサービスに海外の方々が喜んで消費することが期待されています。割安の日本の不動産にも引き続き海外マネーが入ってくることが予想されます。コロナからの復活を遂げるには、短期的に「安い日本」を売りにして、多くの消費や投資を呼び込むことは経済にとって必要です。しかし、それは、これまでと同様に日本を労働集約型の国に押し留めることに他なりません。円安を論じるならば、目先のコスト高の話だけではなく、長期的に日本がどうなっていくのかを考えることに意味があるように思います。

日本のサービスやモノに「付加価値」を付けて、価格を思い切って上げることで賃金上昇の循環を作ることができる、これが最後のチャンスかもしれません。日本企業を守り、日本の雇用を守る。円安という難題に皆で考えることで、染みついた30年のデフレマインドを払拭できるのではないかと思います。

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