はじめに

さて、本題に戻りグローバルでの業績分析と同様に、アマゾンジャパンの2009年から2021年まで13年間の売上推移を確認しておこう。

私の入社直後、2009年度には約3000億円弱だった売上は、2021年度には約2・5兆円に拡大している。そして、各メディアなどが推計しているアマゾン直販部隊の売上とマーケットプレイスの販売事業者による売上を含めた流通総額はおよそ5兆円程度である。

規模感を比較すると、楽天は楽天市場のみの流通総額は数年前から公開しておらず、楽天トラベルを含めた流通総額は5兆円であるので、アマゾンはその高い成長率によって先行していた楽天市場を越えていると推測できる。また、販売事業者のみのマーケットプレイス流通総額は、2018年度には9000億円を超えていたことを発表しているが、2021年度では、少なくとも2・5兆円以上になるとみられる。

とはいえ、北米と比較して日本でのEコマースにおけるマーケットセグメントシェアがまだまだ低いにも関わらず、対前年比の成長率は北米やドイツ、英国などのグローバルよりも低水準に留まっている。2020年の日本のサービス、デジタル分野を除く物販系のEコマースの市場規模は12兆2333億円で、小売市場全体151兆3150億円に対して8.08%である。そして、アマゾンジャパンのEコマースにおける売上2.2兆円のセグメントシェアは米国の39%に対して14%程度にとどまっていることになる。

そのため、グローバルの売上に占める日本の売上の比率が2014年度以降は10%を切り、2021年度はわずかに4.9%になっているように年々低下。アマゾン全体における日本のビジネスの存在感は薄くなっていることが否めない。

日本でのマーケットセグメントシェアの成長率がグローバルに比べて低水準に留まっているのは、そもそも日本ではヤマト運輸や佐川急便、日本郵便といった宅配ネットワークの整備が進んでいて、楽天市場をはじめとするEコマースの競合が激しい点が挙げられる。要は、誰でもそれなりに迅速な配送サービスを顧客に提供することが可能である。

もちろん、アマゾンのようにビジネス規模が大きくなって同レベルのサービスを継続して提供することはそんなに簡単なことではない。が、アマゾンにとっては、この優良な日本の宅配サービスがプライム会員向けの配送サービスを通常配送に対して差別化を難しくしている。プライム会員向けのお急ぎ便配送と非プライム会員向けの通常配送とでは注文する時間によっては配送まで数時間から1日程度しか差がなくなり、配送特典だけではプライム会員になるメリットが少なく会員数拡大のブロッカー(障壁)になっている。

もう一つは、日本の人口が平野にある東京、名古屋、大阪、札幌、福岡などの大都市に集中しており、そこにはスーパーマーケット、コンビニエンストア、ドラッグストア、その他量販店が網の目のように多く立ち並んでおり、利便性がすでに確立されていることが挙げられる。土地が広大で、買い物も不便な人口の割合が多い米国などと比較すると、日本の大都市に集中している顧客は、アマゾンの配送スピードなどをメリットとして感じにくいからだ。

このような環境の中、1~2時間での配送を可能にする「Prime Now(プライムナウ)」や生鮮食料品を扱う「Amazon Fresh」の成功は日本では簡単ではないであろう。実際に2019年11月からは、「Prime Now」の対象エリアを縮小し、2021年3月には遂にサービスを終了している。

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