はじめに

アマゾンジャパンの意外な業績

アマゾンの日本法人の軌跡を確認しておこう。

現在の「アマゾンジャパン合同会社」は、日本国内で商品調達、販売サイト構築、販売、配送、課金、回収までの一環プロセスを完結できるようにするため、2016年5月に当時のアマゾンジャパン株式会社とアマゾンジャパン・ロジスティクス株式会社が統合したものだ。もちろん、日本で登記された会社として他の日本の会社と同様に納税している。

もともとアマゾンジャパン株式会社は、日本の顧客向けの販売元であった米国のAmazon International Sales, Inc.に対して業務サポートを提供する形態をとる会社であった。以前の形態と現在の形態、どちらにしても、日本独自で開発するサービスやシステムはわずかで、仕事を進めるに当たっては米国本社との関係が濃密だ。

アマゾンは展開する全ての国で、「同じサービスを同じ品質で」提供することを目指しており、システム開発などは基本的に米国本社が統括している。システム開発のみならず、最終意思決定、予算配分、企業文化の統一、人事制度の統一、財務、法務などバックエンドのコントロールなど、米国本社を軸とした「企業統治=ガバナンス」が徹底されているのも、アマゾンという世界的企業の大きな特徴となっており、それが強みでもある。

日本企業の海外展開と比較してみよう。私は前職でフランス、ルーマニア、タイにおいて社長として日本企業の現地法人を経営していた。もちろん、メーカーでも商社においても、販売については日本本社の各製品事業部との仕入れ価格、納期調整などを行いながら、また販売戦略などをすり合わせながら進めていく。

一方、それ以外の販売をサポートする販売網構築、組織構築、社内システムの構築、企業文化の醸成などは、日本本社からの影響力は少なく、それぞれの現地法人に任されることが多かった。さらに買収した企業でさえ、遠慮からか有効的に統治することなく、そのまま放置で買収によるメリットを出せていないケースもあった。

私がフランスの会社を任されたのは買収後10年も経ってからで、赤字垂れ流しの状態をこのままにしておくわけにはいかないという背景があった。しかし、現地法人任せで、ガバナンスを効かせてテコ入れしてこなかったため時すでに遅しであり、結局、会社を清算することになった。

逆にアマゾンが象徴する米国企業のガバナンスには遠慮などという文字は全くない。各国の現地法人を細部までコントロールし、権限を本社に集中させ、情報を吸い取って、グローバルでの優先順位のもとに投資を振り分けている。

ガラパゴス化(独立した環境で最適化が進み、その結果、他地域との互換性を失い取り残されること)を排除し、重複した組織を少なくし、非常に効率的な経営ではあるが、各国に与えられる決裁権が日系企業と比較すると小さいので、実際はこのような外資系の経営層の仕事は面白くないと感じる人もいるかもしれない。

余談にはなるが、私が前職の株式会社ミスミを退職したのも同様の理由からだった。当時、私はタイ法人の社長として4事業を統括していたが、本社がそれぞれの事業部のグローバル軸を強化し、海外法人の各事業マネージャーは、海外法人社長へのレポートラインから本社のそれぞれの事業部に変更するという決定がなされ、社長としての決裁権縮小により士気がさがったからだ。

もちろん、理にかなっており適切な判断ではあったが、海外法人社長の役目が人事、財務、法務、コールセンター、ロジスティクスセンターなどのバックエンドの管理のみになるということに面白みをなくしたのである。外資系も日系企業も効率的な経営と社員のモチベーションは表裏一体なのかもしれない。

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