はじめに

「パワーポイント」使用禁止の理由

 
アマゾンでの社内プレゼンテーションで、パワーポイントの使用が禁止されているのは、かなり有名な話になってきた。「パワポ禁止令」を発令したのは、他ならぬジェフ・ベゾスだ。ベゾスがパワポを禁止した理由については、社内でもさまざまな逸話が語り継がれている。なかでも、私がさもありなんと思っているのが、外部コンサルティング会社にまつわるエピソードだ。

アマゾンがスタートした当初、サービスの骨格を固めるためにベゾスは外部のコンサル会社に提案を依頼した。彼らは当然気合いを入れたパワポの資料を作成してプレゼンテーションを行ったのだが、手の込んだ紙芝居のようなビジュアルに惑わされるばかりで具体性がなく、何を提案したいのかよくわからないとベゾスが激怒したというものだ。

実際、パワポのプレゼン資料は要点だけを箇条書きにして詳細は口頭だけで説明したり、見栄えのいい、そして都合のいいグラフなどを多用して提案のメリットや効果を強調することが多い。また、アニメーションなどを使い、みてくれに時間をかけることがある。

でも、後から資料を見返しても肝心なことが口頭説明だけで書かれておらず、〝なんだかよくわからない〟ということになりがちだ。ベゾスはもちろん、ヒエラルキーが明確で多くの案件のスピーディな決断を求められているアマゾンのリーダーにとって、面倒なことこの上ない。

作成者の主観が過剰に入り込むという理由で、グラフの使用も好まれない。シンプルな棒グラフひとつでも、軸のスケールや幅を変えるだけで印象が大きく変わってしまう。対象を比較しづらい円グラフはほとんど使用されることがないし、無意味な装飾を施した3Dのグラフなど言語同断である。
 

ビジネスドキュメントは「1ページャー」と「6ページャー」

 
アマゾン社内のビジネスドキュメントは、「Narrative(ナラティブ=物語)」と呼ばれるA4で1ページの「1ページャー」、もしくは6ページの「6ページャー」のメモのどちらかにまとめることになっている。

報告書など社内で提出するほとんどのドキュメントは1ページで簡潔にまとめる。年度ごとの予算であったり、大きなプロジェクト提案などは6ページにまとめるのが基本的なルールだ。ドキュメントの内容はどんなトピック(論ずるテーマ)かを示す見出しと、トピックを説明する文章のみ。詳細な数字や、補足情報が必要な場合は別途 「Appendix」(添付資料)として、枚数にはカウントしない。

6ページャーが提案される会議では、冒頭のおよそ15~20分間、まずは全員がドキュメントを読むための時間にあてられる。静まったミーティングルームで参加者が黙々とドキュメントを読む雰囲気はかなり緊張感が漂ただよっている。

その後、基本的にはページごとにドキュメントの提案者であるオーナーが出席者からの質問に答えながら、さまざまなフィードバック、アドバイスを通して議論を重ねていく。当然「Dive deep」(深掘り)の質問が相次ぐことがほとんどなので、提案者にはどんな質問にも理論的な回答ができるようにプロジェクトの細部まで把握、理解をするのと同時に、提案内容に共感を得るための説明能力や説得力が求められることになる。

この「1ページャー」「6ページャー」ルールが社内で徹底されるようになった2009年頃の当初は、A4で6ページのドキュメントはそれなりの文章量とはなるが、大がかりな予算案やプロジェクト提案をまとめるには少々ページ数が足りないと感じることがあった。まして1ページにまとめるためには、余計なエピソードや言い逃れが入り込む余地はない。導入当初は姑息にも文字サイズをルールであるフォントサイズ「11 」より小さくしたり、行間をせまくしたりしてスペースを稼いだものだ。

でも、ルールに則ったドキュメント作成が習慣になってくるにつれ、定められたフォーマットに従って論旨を構築する作業には、無駄を削ぎ落とし自らの思考を整理する効果があることを実感できた。

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