はじめに
タレントは個人事業主として法人化すべき?
──多くのタレントの方は個人事業主となりますが、会社員とどういった違いがあるのですか?
井内:タレントの方は、芸能事務所の従業員ではなく、芸能事務所と契約を結んだ個人事業主となっていることが多いようです。その場合、テレビ出演などタレント業で稼いだ収入については事業所得となり、所得税の確定申告が必要です。一方、多くの会社員の方は、企業があらかじめ税金を差し引いて給与として支払ってくれていますので、確定申告が不要のケースが多いです。
井内:なお、タレントの方が自ら法人を設立し、法人として芸能活動のギャラなど報酬を受け取る法人化という方法もあります。法人が報酬を受け取って売上を上げることになりますが、その利益については、所得税ではなく、法人税がかかることになります。そして、タレント個人は代表取締役などその法人の役員となり、法人が得た収入から役員報酬として受け取る形になるでしょう。法人の役員であるタレントが受け取った役員報酬は所得税の対象です。
──個人と法人化の違いを詳しく教えてください。
井内:まず、所得税も法人税も利益に対して課税されます。
井内:所得税は累進課税ですので、5~45%で税率が設定されています。売れっ子で収入が高く、利益が非常に高い人は税率も45%になるため、結果税金もかなりかかってしまうことになります。
一方、法人税は原則税率23.2%と一定です。法人の規模や売上による軽減税率はありますが、収入が多くなり利益がかなり高くなっても税率は上がらないため、稼いでいる人は法人のほうが有利でメリットがあるでしょう。逆に儲かっていない時は法人のほうが税率も高くなってしまいます。具体的には、個人事業の利益が700万円くらいある場合は、所得税率が23%となることから、法人化を検討してみるのも良いと言われます。
井内:ただし、法人となった場合、赤字でも法人住民税7万円が発生します。法人税は計算も難しく、その申告は個人の所得税の申告より複雑ですので税理士に依頼することも多く、その税理士への手続き代行の費用も掛かることになります。
また、法人の設立そのものにも費用がかかります。法人の設立には株式会社の場合、定款認証、登録免許税、会社の印鑑作成などで20万円以上かかるとお考え下さい。合同会社を設立する場合はもう少し安くできます。司法書士など専門家に手続きを代行する場合はさらにその手数料もかかります。また、法人の登記情報(法人の所在地など)に変更があると変更登記の費用がかかります。