はじめに
米ドル/円、今後の見通しは?
これらを踏まえた上で、次のテーマ「この先どうなるか?」について考えてみたいと思います。結論からいうと、このままどんどん米ドル安・円高が広がる−−例えば8月中に130円を割れる、といったようなことはないのではないかとみています。というのは、既に述べたように米ドル/円は基本的に米金利次第なのですが、その米金利がもっと下がるかと言えば、それには自ずと限りがあるのではないかと考えているためです。
この米金利の中でも、金融政策を反映する米2年債利回りに注目して考えてみましょう。米2年債利回りは、米金融政策を反映するため、基本的に米国の政策金利であるFFレートの影響を受けます。そのFFレート上限は、7月27日(水)のFOMCで2.5%まで引き上げられました。その上で、9月FOMCではさらに引き上げられる見通しとなっています。
経験的に、米2年債利回りはFFレート引き上げが続く中では、FFレートを上回って推移します。ちなみに、前回米2年債利回りを下回ったのは2020年3月の「コロナ・ショック」でFRB(米連邦準備制度理事会)がゼロ金利を決める約1ヵ月前、またその前は2019年7月から利下げを始めるやはり約1ヵ月前でした(図表4参照)。
今のところ、FRBはまだ年内利上げを続けるとの見方が一般的でしょう。ということは、年内米2年債利回りはFFレートを上回って推移する可能性が高いということになります。そのFFレートは、上述のように9月のFOMCでは0.5%引き上げられて3%になるとの見方が今のところの基本です。そうだとすると、米2年債利回りの7月29日(金)終値、2.88%程度は「下がり過ぎ」で、9月FOMCにかけて米2年債利回りは3%以上に上昇する可能性が出てくるでしょう。
仮に、米景気減速懸念が拡大し、9月FOMC利上げ幅が0.25%へ縮小するなら、FFレートは2.75%までの上昇にとどまることになるので、その場合は米2年債利回りもさらに低下し、それに連れて米ドル安・円高になるリスクは出てくるでしょう。
それにしても、これまでの米ドル/円と米2年債利回りの関係を前提にすると、130円割れには、米2年債利回りが2.5%を大きく下回ることが必要と考えられます(図表1参照)。FFレートは既に現在でも2.5%ですから、それを米2年債利回りが大きく下回るのは、利下げを織り込む時であり、それは余程の米景気悪化となった場合のことでしょう。以上のように考えると、米金利の見通しを前提とした場合、米ドル/円もこのままどんどんと、8月中に130円を割れていく可能性は低いと考えます。
さて、長々と述べてきましたが、2022年7月末のような「円高パニック」が初体験で不安になった人にとって、少しでも参考になったでしょうか?
外貨投資は、かつてなかったほど重要になってきたと思っています。しかし、円高というリスクも無縁ではありません。ある程度専門的な知識を客観的に確認しないと不安になることもあるので、そういったことへ役立つ情報発信を心がけたいと思います。