はじめに
まだ外貨運用を行っていない、これから始めようと思ったら「歴史的円安」となっていたといった方々はどうしたらよいのでしょうか?
前回は、割高局面での短期戦略について説明してきました。
(1)投資額の抑制
(2)ストップロスを付ける
(3)小まめな利益確定
といった3つの方法を解説しましたが、2・3などは「面倒そうで自分には無理!」と感じた方も少なくなかったかもしれません。割安局面での長期保有に比べると煩雑に感じそうですね。
たしかに割高局面での外貨買いは、長期保有に比べると煩雑です。ただそれまでしても、米ドルなど外貨への投資を始める時代になっている可能性はあるのかもしれません。それは、円相場を取り巻く環境で構造変化が続く中で、かつてより円高になりにくく、円安になりやすい可能性が出てきたからです。
それでも高まる外貨投資の必要性
2022年3月からの米ドル高・円安は、日米の消費者物価で計算した購買力平価をかつてないほどに大きく超えてきました(図表参照)。これは直接的には、米インフレ対策の利上げの影響が大きいと考えられます。
【図表】米ドル/円と日米購買力平価(1973年~)
インフレ、つまり物価上昇とは、文字通りならモノ(物)の価値が上がるわけですから、相対的に通貨価値の下落といった意味になります。ただし、そんなインフレを抑制するための大原則は金利の引き上げであり、それは基本的には通貨高を後押しすることになります。
こういった中で米ドル/円はこの消費者物価で計算した購買力平価近辺で推移することが多くなっていました。これは、2010年以前、米ドル高・円安でも、消費者物価で計算した購買力平価に近付くことがほとんどなかったことからすると、注目される変化ではないでしょうか。
日本の貿易収支で赤字が目立つようになったことなど、日米経済の構造変化を受けて、かつてより円高になりにくく、円安が進みやすくなっている可能性があるとしたら、円資産だけを保有していることのリスク回避として、米ドルなど外貨への投資の必要性は高まっているでしょう。
歴史的円安局面での円高リスクにどう対応するか
改めて、ここまでの米ドル高・円安を振り返ってみましょう。2021年1月に、米ドル/円は102円、つまり100円割れ寸前の状況にありました。ところが、2016年6月、いわゆる「Brexit(英国のEU離脱)ショック」以来の100円割れが回避されると、その後はかなり長い間方向感の乏しい、ほとんど横這いといって良いような相場状況が続いたのですが、上述のように2022年以降は米ドル高・円安が急拡大となり、それが一段と拡大する中で、1998年以来、つまりほとんど四半期世紀ぶりの米ドル高・円安となったわけです。
以上のように見ると、あれよあれよ、という感じで記録的な円安が広がったという言い方にもなるでしょう。その意味では、急な円高からの変化に対して、頭を切り替えることは簡単ではなかったのではないでしょうか。