はじめに

なぜ恒久化が必要か

現状のNISAは、制度自体に期限があります。

例えば、今のNISAは最も長期間投資が可能な「つみたてNISA」でも、期限は2042年までです。このように時限措置を設けたままですと、早く始めた人ほど制度の恩恵を受けられるようになっていることと、いずれ制度が終わると使えないといった気持ちから、投資に乗り出せない人が多いのではないかという議論があります。

「NISAという制度をずっと使えるようにします」というのが恒久化の意味です。

次に、毎年NISAに回せる金額が300万円だとして、生涯いくらまでNISA枠を使えるのか。「累計投資額」に制限が設けられるのかどうかが気になります。

NISAの非課税保有期間を無期限化し制度実施期間を恒久化すると、生きている限り毎年新たな非課税枠が設定されることになり、累計の投資額は青天井になります。

私自身は、後述する海外の事例などをみても、「累計投資額に制限なし」で良いと思います。ただ、国内の議論としては、累計投資額を拡大しすぎると「金持ち優遇」だという懸念点もあるようです。

そこで、現段階の改革案では累計投資額に2,000万円の上限を設けるとしています。つまり、制度自体は恒久化しても、死ぬまでずっと投資額を増やし続けられるという事とは異なるということです。

上限を設ける理由は、NISAが富裕層を優遇するものではなく、中間層の資産形成のためにあるから、というものです。

NISA拡充の背景、英国のISAと比較

制度設計においては、日本の先を行く、英国のISAが参考になります。

1999年に英国民の貯蓄率の向上を目的として導入され、今では、成人人口の約半数がISA口座を保有しています。制度の導入から7年後にISAも恒久化されたことをきっかけに、ISAの残高と口座数は共に大きく伸びました。

ISAは、特に低所得者層や若年層に対しても普及していることを高く評価されています。さらに、累計投資額の上限はなく富裕層の利用を促すものとなっています。恒久化した後も、英国政府は制度をシンプルにし、更なる英国民の投資習慣の定着を目指してきました。

英国では20年間で家計金融資産が2.3倍になっていますが、ISAの恒久化で、利用者が増加したことによる貢献度合いが高いと言われています。国民全体に資産形成の恩恵が受けられる環境づくりの成功事例です。

シンプルな制度が「カギ」、最後は「教育」

今回の改正が実現されれば、制度はシンプルにはなります。ただ、NISAを利用して購入できる金融商品が多岐にわたるため、最後は「金融リテラシー」を高める「教育」が最も重要です。

今回の改正要望は、国民の資産形成の追い風になることが期待できる意欲的な抜本改革案ですが、「金融教育」とも合わせて岸田政権の本気度が試されます。

日本の家計金融資産2,000兆円のうち、その半分以上が預金・現金で保有されています。結果、米国では20年間で家計金融資産が3.4倍、英国では2.3倍になっていますが、日本では1.4倍です。家計が保有する金融資産を拡大していくために「貯蓄から投資」へのシフトはまったなしです。

制度を整えて、そこに「魂」を入れて生きたものにするには、最後は「教育」が大きな役割を担うと考えます。

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