はじめに

次につなげるため成功も失敗も検証が必要

次に、「基本」から少し踏み込んだ観点から見ていきましょう。そもそもこの9月前半は、一方向へ相場が大きく動く傾向があるということです。それを知っていたら、米ドル高は加速する可能性があったわけですから、やはり米ドル買いポジションの決済を急ぐことにはならなかったと思います。

米国では9月の第一月曜日がレイバーデーの祝日になっています。これが2022年の場合は9月5日でした。プロのトレーダーの中には、このレイバーデーまでが実質的な夏期休暇と位置付けている人が多いとされ、このためレイバーデー明けからトレードが本格化することから、相場は一方向へ大きく動く傾向があることが知られてきました。

このような相場の季節的な傾向を「アノマリー」と呼びますが、私は9月に入って140円を超えてから一気に145円突破寸前まで米ドル高急加速となったのは、まさに「レイバーデー・アノマリー」通りの展開だなと感じていました。

最後は、より専門的な知識で確認してみましょう。図表2は、2022年3月からの米ドル/円のチャートに米国の金利を重ねたものですが、かなりきれいに重なって推移してきたことがわかるでしょう。これを見ると、140円を超えた米ドル高・円安となったのは米金利が大きく上昇したからだということになります。そして、そんな米金利の見通しについて、8月下旬から大きな変化が起こりました。

8月下旬、世界の金融市場関係者は、米国の金融政策の最高責任者であるFRB(米連邦準備制度理事会)議長のパウエル氏の発言について固唾を飲んで見守っていました。その発言は、当初は30分程度の予定だったらしいのですが、結果的には8分といった拍子抜けするほどのショート・スピーチで終わりました。ただ短いスピーチではあったものの、多くの市場関係者は、これを受けて予想以上にFRBは大きく金利を上げそうだと受け止めたのです。

図表2で見たように、米ドル高・円安は米金利上昇に連れた結果でした。その米金利がさらに大きく上昇する見通しとなったら、米ドル高・円安も加速する可能性がある一方で、下落リスクは低下したと言えるでしょう。


今回はなぜ140円を超えてからの「早過ぎた米ドル売り」が、「儲けそこなう」結果を招いたかについて説明してきました。「儲けそこなった」とは言っても、利益は出たようですから、決して悪い話ではなく、紹介したようなことが分かっていたら、もっと大きな利益を出せるチャンスだったということです。

逆に、140円から米ドル売りで入り、あっという間にも145円近くまで米ドルが急騰すると、こういうケースを「踏み上げられる」と呼びますが、大きな損失を抱えたケースもあったかもしれません。

所詮、後講釈だろうと思う方は、次の似たようなケースで活用できるように参考にしていただければ幸いです。成功も失敗も出来る限り検証し、次のチャンスで失敗を繰り返さず、成功はより大きくできるようにして、FXトレードと長く付き合えることを心より期待しています。

この記事の感想を教えてください。