はじめに

「発明・創意・工夫の中で一番大切なのが時間で、いくら良い発明、発見をしても、百万分の一秒遅れたら、発明でも、発見でもない」

「本田宗一郎からの手紙」
本田宗一郎 (ホンダ創業者)

2013年6月に発売された「週刊現代」の「全時代で最も金持ちなのは誰かランキング」で第4位に輝いたのがホンダの創業者・本田宗一郎です。

静岡県に生まれた本田は幼い頃から当時珍しかった自動車の後をついて走ったり、飛行機の曲芸飛行を見るために大人の自転車に三角乗りをして町に出かけるほどエンジンが好きな少年でした。高等小学校を卒業して東京・湯島の自動車修理工場に徒弟奉公して、自動車の修理技術を身につけたのち、アート商会浜松支店を設立、自動車修理業で成功します。しかし、それには飽き足らずメーカーを志し、戦後、本田技術研究所を創業、自転車に小型エンジンを乗せた、通称「バタバタ」でまたも成功を収めます。

その後、二輪車で世界のトップメーカーとなり、四輪車に進出。アメリカのマスキー法に合格した低公害エンジン「CVCC」の開発により四輪メーカーとしての地位を確立します。数々の特許を持ち、大ヒット製品をいくつも世に送り出した本田が好んだ言葉に「6日のあやめ、10日の菊」があります。あやめは端午の節句の5日、菊は重陽の節句の9日に用意してこそ意味がありますが、1日遅れてしまえば意味がありません。

本田は発明や発見も同じだと考えていました。こう話しています。

「せっかく良い技術を出しても、時間というタイミングがずれれば技術はタダと同じである。発明・創意・工夫の中で一番大切なのが時間で、いくら良い発明、発見をしても、百万分の1秒遅れたら、発明でも、発見でもない」

何もできない人に限って、「もう少し時間があれば考えつくんだけどなあ」と言い訳をしますが、それではただの負け犬になってしまいます。「時間」の大切さ、「スピード」の大切さ、「タイミング」の大切さを知る者だけが成功者となるのです。

ここがポイント
発明・創意・工夫の中で一番大切なのが時間。わずかの遅れが命取りになる。

「最初からそんな甘えたスケジュールにすべきではありません。そんなことをしたら、無駄に時間を多く使うに決まってますから」

「イーロン・マスク」
イーロン・マスク (スペースX創業者、テスラモーターズCEO)

イーロン・マスクが初めて起業したのは24歳の時です。その7年後の31歳の時にスペースXを創業して、6年後に初めてのロケットの打ち上げを成功させ、41歳の時には民間企業では不可能と言われた国際宇宙ステーションとのドッキングに成功しています。

そしてもう1つの会社であるテスラには33歳の時に出資して、その6年後にはアメリカの自動車会社としてはフォード以来の株式公開を実現しています。もちろんそこに至るまでにはたくさんの失敗や危機があったわけですが、それでもいずれも「国家レベルの事業」と言われるロケット開発や自動車開発で、これほどのスピードで成果を上げるというのは驚くほかありません。

これほど短期で結果を出すマスクには、スピードへの強いこだわりがあります。社員が立てた月間や週間の予定に対し、「一日単位、一時間単位、分単位に落とし込め」とさらなるスピードアップを求めますし、電気自動車「モデル3」の開発に際しては同業他社が4~5年かけるところをわずか2年半で完成させるよう指示をしています。理由はこうです。

「最初からそんな甘えたスケジュールにすべきではありません。そんなことをしたら、無駄に時間を多く使うに決まってますから」

通常、スケジュールは自分たちの経験を基に少し余裕をもって立てるものです。それでも予期せぬことが起こって遅れるわけですが、マスクは「無茶に無茶を重ねてやっとできるかどうか」というスケジュールを口にします。そのため混乱や延期もつきものですが、マスクの場合、「スケジュールが楽観的すぎる」と批判されたとしても、最終的には「必ず結果を出す」ところに強みがあります。その積み重ねがマスクに対する信頼となり、世界一の資産家へと押し上げることになったのです。

ここがポイント
スケジュールは無茶苦茶でも「言ったことは必ず実行する」が圧倒的評価につながる。

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