はじめに

クリティカル・シンキング──「HOW」を増やすことが重要に

クリティカル・シンキングによる典型的な問題解決の流れは図表2-2のようになります。

これは、人間の脳の限られた情報処理能力をいかに効果的に使って問題解決をするかという前提から発展したものです。それゆえ、フレームワークを使って分析をしたりするという形で、情報や変数を絞り込むことに主眼が置かれています。つまり、 人間の脳の認知能力には限界があるので、変数を絞り込んで抽象化し、モデル化して考える ということです。

例えば、経営における分析のフレームワークに3Cや4P、あるいは7Sといった有名なものがありますが、これらは人間の認知能力を前提にしています。30Cや40Pでは、人間はそのフレームワークを覚えることができません。人間の頭で処理できる数に落とし込んでいるわけです。

クリティカル・シンキングの考え方自体は2030年も相変わらず有効ですが、多少のバージョンアップは必要です。具体的には、問題解決の HOWの方法論の激増、変化 を理解することです。

【図表】クリティカル・シンキングによる問題解決

クリティカル・シンキングでは、これまでは「まずイシュー設定」が重視されてきました。つまり、解決すべき問題や「あるべき姿」を、まずはしっかりイメージするということです。

ただ、そのイシュー設定は往々にして既存の実現可能なHOWを想定したものになってしまい、予定調和的にそこに持ち込むということが少なくありませんでした。これでは「決して悪くはないけれど、エクセレントではない」解決策しか出てきません。

イシューの設定は重要ではあるものの、既存のHOWの世界観に留まるのではなく、どんなHOWがあるのかを正しく知ったうえで、それを行う必要性が増しているのです。

表現を変えると、 イシュー設定とHOWに至るまでのスピードアップを行い、どんどん修正をかけていく力が必要となる のです。

テクノベート・シンキング──AIができることを知っておこう

テクノベート・シンキングは、 徹底的にコンピュータを活用しようという考え方 です。

コンピュータが問題を解決した初期の有名な例に、数学の4色問題があります。これは「地図において隣り合った地域を別の色で塗りつぶす際、4色あれば足りる」という命題でした。長年、数学者はこれが正しいのかを解決できずにいましたが、コンピュータがすべての場合分けにおいて4色で足りることを証明してしまったのです。

今となっては、これはテクノベート・シンキングの先駆けだったとみなすこともできます。つまり、人間の脳ではとても計算できないことも、機械に適切なアルゴリズムとプログラム、そしてデータを与えれば、機械がそれを計算してくれるということです。

そして、その 中心となるのがAI、すなわち人工知能 です。

【図表】テクノベート・シンキングによる問題解決

典型的なテクノベート・シンキングの流れは図表2-3のようになります。この中で 重要なのは、やはり、ありたい姿を描く上流部分 です。そのためには、 「機械は(ある予算の範囲で)何ができるか」という情報を常にアップデートしておくことが必要 です。

下流の実装(プログラミング)も重要ですが、ここは一般には専門家が担当する部分です。一般のビジネスパーソンとしては、自分でプログラミングは組まないまでも、 プログラミングの基礎程度は手を動かして肌感覚で知っておくことが望まれます 。2030年までにはプログラミングの在り方も大きく変わりそうなので(例:コードレスになる)、最低限のキャッチアップをしておけばいいでしょう。この部分が理解できれば、「ありたい姿を描く」の部分もスムーズに行えるようになり、問題解決も効率、効果が上がるからです。

テクノベート・シンキングが威力を発揮するのは、ソリューションの個別化(パーソナライズ化) です。例えば、スマホのSNSやニュースサイトの画面は各人で異なりますが、それはそのようなアルゴリズムを用意しているからです。さらに個人主義が進む2030年にどのような個別化を消費者や社会が求めているのかに敏感になる必要があります。

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