はじめに

障害年金は、病気やけがなどによって所定の障害状態になったとき、国から支給される年金です。今回は障害年金が支給停止になった場合、老後、暮らしていけるのかとお悩みの方から寄せられた相談を元に考えてみたいと思います。


老後の年金は障害年金に上乗せしてもらえないの?

まずは、ご相談者Aさんの状況についてです。60歳で独身のAさんは、かつて厚生年金に加入して会社員として働いていた時期がありました。ご両親の介護のため退職されましたが、精神疾患を患いここ10年ほど障害基礎年金を受給しています。昨年、お父様を看取られ、お母様の認知症が進んできたことから、近いうちにお母様は介護型老人ホームに入居予定とのことです。現在は、お母様が受け取る遺族年金とAさんの障害基礎年金で暮らしており、金銭的にはなんとかやってこられています。今後、お母様が老人ホームに入居されたら、Aさんは自身の障害年金のみで暮らしていくことになります。一人暮らしへの不安に加えて、年金と貯蓄で老後の暮らしをまかなえるか相談したいと、筆者の元へ来られた次第です。

まずは、今後、Aさんお一人で生活するにあたり、一生涯受け取り続けることができるのは年金収入であることをお伝えしました。年金の受け取り額を増やすことができれば、長生きした時でも一定の安心感を得られると筆者は考えています。そこで、ねんきん定期便を見せていただき、年金見込み額を確認しました。年額ベースで、62歳から「特別支給の老齢厚生年金」を約20万円、65歳から「老齢基礎年金」約68万円と「老齢厚生年金」約20万円と記載があります。Aさんは何となく、障害基礎年金に上乗せしてこれらの年金を受け取れると思っていたのです。

65歳前と後で扱いが変わる老齢厚生年金に要注意

62歳からの特別支給の老齢厚生年金は、所定の条件を満たした時に受け取れる年金になります。通常は、ねんきん定期便に記載があれば、所定の条件を満たしていることになります。ただし、Aさんは障害基礎年金を受給中ですから、ねんきん定期便に記載されていたとしても残念ながら特別支給の老齢厚生年金を受け取ることはできません。なぜなら、公的年金は「1人1年金」が原則だからです。老齢や障害など支給事由が異なる年金については、1つを選択することになります。Aさんの場合、障害基礎年金、あるいは特別支給の老齢厚生年金約20万円のどちらかを選択します。Aさんが受給している障害基礎年金は2級で年額78万円ほどですから、金額的に有利なのは障害基礎年金です。また障害基礎年金は非課税であることも覚えておきたいところです。

Aさんは、62歳から特別支給の老齢厚生年金を受け取れると思っていましたから、とても落胆されました。ただし、65歳以後は特例により障害基礎年金と老齢厚生年金を合わせて受け取ることができます。つまり、約20万円が障害基礎年金に上乗せされるのです。そのことが分かるとAさんの表情も少し明るくなられました。

また、65歳以後の老齢厚生年金については、繰り下げて受給額を増やすことが可能なこともお伝えしました。具体的な増額率は、70歳になるまでで1.42倍の約28.4万円、75歳になるまでで1.84倍の36.8万円になります。仮に100歳まで生きた場合、受給総額は最大75歳まで繰り下げると約220万円増やせます。繰り下げしないで65歳から75歳になるまでの受給額200万円を貯金で賄えるのであれば検討したいところです。

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