はじめに

「通常清算」「特別清算」「破産」の違い

では、清算型における「通常清算」「特別清算」と「破産」の違いはどこにあるのでしょうか。

詳細は後述しますが、ここでも簡単に説明します。

通常清算は、会社の残っている財産をすべてかき集めれば負債を返せる場合に選択できる清算手続となります。この手続きに裁判所は関与しません。

特別清算は、清算の遂行に著しい支障がある場合や会社が債務超過の可能性がある場合に選択できる余地のある清算手続となります。たとえば、現時点では債務超過であるが、各債権者と個別に和解して負債をカットしてもらうか、あるいは債権者の多数決(債権者集会に出席した債権者の頭数の過半数かつ総議決権額の3分の2以上の同意が必要)により負債をカットしてもらうことによって、株式会社の資産ですべての負債が完済できるのであれば、株式会社を清算することができます。たとえるなら、特別清算は、債権者との交渉を通じて行われる〝和解手続き〟と言えるかもしれません。ただし、株式会社しか認められない手続なので、持分会社(合同会社・合名会社・合資会社)などは特別清算の手続きがとれないことに留意する必要があります。また、特別清算は、裁判所に申立てをする必要があります。

最後に、破産は会社が債務超過(または支払不能)の場合に選択のできる清算手続となります。債権者と交渉することなく、〝強制的に〟会社をたたむ手続きになるため、ネゴシエート(交渉、折衝)はありません。そのため、破産のほうが強引に手続きを進めていく印象が強く、利害関係者に対しても迷惑をかけやすいと思われているのかもしれません。

ちなみに、破産というと「自己破産」という言葉を想起する方も多いのではないでしょうか。「自己破産」という言葉は、一般に個人破産のシーンで使われることが多いため、「自己破産=個人の破産」と誤解している人もいます。しかし、法人の破産においても、債務者が破産を申し立てる場合には「自己破産」と表現するように、個人か法人かを問いません。

つまり、自己破産とは、個人か法人かにかかわらず、債務者から申し立てる破産のことです。一方で破産は、債権者からも申し立てることができ、これを「債権者破産」と呼びます。ただし、債権者破産の場合、申立てに際して、債権の存在および破産手続き開始の原因となる事実を疎明(証拠をあげること)しなければなりません。

具体的には、破産手続開始の原因となる事実を疎明するべく、債務者の資産と負債を明らかにする必要があります。しかし、債務者が資産や負債の情報を提供してくれるとは限らず、実務上はハードルが高いとされています。そのため、本書においては、債務者が自ら申し立てる自己破産を中心に解説しています。

※参考「破産法18条」
第1項 債権者又は債務者は、破産手続開始の申立てをすることができる。
第2項 債権者が破産手続開始の申立てをするときは、その有する債権の存在及び破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない。

補足として、「事業を停止させる」という意味合いにおいては、再生や清算以外にも「休眠」というものがあります。休眠は特殊な状況でなければ使う意義がなく、また赤字や債務超過で用いることは難しいため、本章の最後(本書136ページ)に別枠で紹介しています。

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