はじめに

倒産が増えているのはコロナだけが原因ではない

倒産を選択する企業が増えている理由は、外部環境の変化だけにとどまりません。少子高齢化の影響もあり、後継者不足による休廃業も増えています。なかでも、負債総額1000万円未満の倒産件数がここ数年で増加しており( 図表4 )、こうした傾向は今後も続いていくかもしれません。2020年度は、新型コロナウイルスによる影響を受けて前年比23%増を記録しましたが、2021 年は政府や自治体の支援策により減少しました。

資金繰り難や赤字体質、債務超過の原因について考えてみると、人件費の上昇や人流の変化、経済状況の悪化や景気後退による販売不振などが挙げられ、この先も厳しい状況が続くと思われます。とくに先行きが見通しにくい飲食業をはじめとするサービス業や宿泊業の中には、倒産を選択する企業も増えてくると予想されます。

こうした傾向を踏まえ、倒産の質やその中身、あるいはフェーズそのものが変わりつつあると言えそうです。

図表4 負債総額1,000万円未満倒産件数の推移

会社のたたみ方の全体像(再生・清算・休眠)

倒産に関連するそれぞれの手法について詳しく見ていく前に、これまでの話を踏まえて、会社のたたみ方の全体像を確認しておきましょう。

世間のイメージと法的手続きの違いを理解する

本書第2章ですでに説明したように、会社をたたむ手続きには 「私的整理」「法的整理」 の2つがあります。

また、法的整理に該当する倒産処理手続きについても、大きく 「再建型」「清算型」 に分けることができます。再建型の手続きとしては、 「民事再生」「会社更生」 があり、清算型の手続きとしては 「通常清算・特別清算」 (以下、併せて「清算」といいます)と破産法に基づく 「破産」 がその代表となります( 図表5 )。

図表5 会社のたたみ方の種類

つまり、会社の倒産手続きは、「 (1)会社を清算するか、再建するか 」「 (2)裁判所を通した法的手続きを用いるか、用いないか(私的に整理するか) 」という観点で分けられるということです。一般的に「倒産」という言葉からイメージされるのは、これらのうち清算や破産であり、場合によっては「倒産=(法人)破産」と思っている人もいるかもしれません。

もともと法律用語には、一般に使用されている言葉とは異なる使われ方をしていたり、別のニュアンスが含まれていたりするものがあります。そのため、「会社をたたむ」と言った場合でも、必ずしも(法人)破産を意味するわけではない点に注意が必要です。個人でも法人でもそうですが、あくまでも破産は、債務処理におけるひとつの選択肢にすぎません。ただ、倒産と破産のイメージがセットになっていることから、「会社をたたむ」という選択に対して、後ろ向きの印象を抱いている方も少なくありません。そのため、「会社をたたむ」という選択肢そのものから目をそらしてしまい、いたずらに時間だけが経過してしまうこともあります。その結果、ぎりぎりのタイミングで弁護士のもとを訪れる人もいるほどです。

そこで、間違った理解をそのまま引きずってしまわないよう、ここで簡単に認識をそろえておくようにしましょう。まず、清算型と再建型の違いは「 会社をなくすか、残すかの違い 」です。厳密に言うと、前者のみが「会社をたたむ」ことになるわけですが、再生型の手続きに関しても、業績が悪化しており、経営が傾いている点では同じです。

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