はじめに
Xデーの決め方
では、最終的に破産を決断しようとするとき、どのようにして「Xデー」を決めればいいのでしょうか。Xデーとは、事業を停止させる日、つまり事業上、会社が倒産する日のことです。本来であれば、破産の全体像を理解したうえで、計画的にXデーを決める必要があります。
破産は悪いことではない
「計画的に会社を倒産させる」と言うと、「計画倒産」という言葉をイメージされる方もいるかもしれません。計画倒産という用語は「意図的に会社を潰す」という意味で、悪質なケースの場合に用いられることも少なくありません。
その場合の計画倒産とは、取引先との契約や債務をあらかじめ踏み倒す目的で、計画して会社を倒産させるというものです。一方、ここでいう〝計画〟とは、破産のスケジュールから逆算して、Xデーを決めていくという意味になります。
これまでも述べているように、「破産」という制度そのものの性質を考えると、破産は必ずしも悪いことではありません。会社の事業が維持できなければ、社員や取引先、金融機関、その他のステークホルダーに迷惑をかけることになります。だからこそ、法律に従ってきちんと会社の債務を整理し、準備することは、経営者としての重要な責務と言えるでしょう。
破産にも費用がかかる
さて、そのうえでXデーをどのように決めていくかというと、ひとつの指標になるのが「現金」です。先行きが見通せなくなった段階ですぐに破産したほうがいいと思われるかもしれませんが、事前の準備とともにお金の用意もしておく必要があります。
ただ、多くのケースでは、どうにか資金繰りをしようと、ぎりぎりまで我慢します。そうして、どうしようもなくなった段階で、弁護士などの専門家に相談するのです。その結果、破産のための費用すら捻出できない場合もあります。
そうならないよう、一定の現金があるうちから、将来を見越して破産を選択肢に入れておくことが大切です。現金があれば、破産をする費用も無理なく捻出できますし、それによってきちんと破産処理を進めていくことができます。
具体的には、裁判費用、弁護士費用、社員などに支払う給与、さらには生活費などが必要最低限用意しておくべき資金となります。それらを用意したうえで、倒産計画の策定と実行に向けて、弁護士とも相談しながら倒産の全体像を確認しておきましょう。
もちろん、なるべく早く手続きを進めたほうがいいでしょうが、すでに会社の業務を停止している場合については、Xデーをいつにしても構いません。なぜなら、業務を停止している状態であれば、現金の推移がそれほど変わらないと考えられるためです。
もし、まだ業務が停止しておらず、社員もいる会社であれば、給料や解雇予告手当なども負担する必要があります。そのような点も含めて、どのようなお金が必要になるのかを確認しつつ、不足しないように準備します。
実際の準備には、最低でも1週間以上みておくといいでしょう。もちろん急いで準備を進めていくとそれだけ大変なので、Xデーを1~2週間後に設定しつつ、お金の準備をはじめ、スケジュールから逆算して行動できるようにしてください。
社員への通知は社長自らが行う
また、Xデー当日には、社長自らが社員に対して会社の倒産を伝えなければなりません。最もつらい仕事ですが、それは代表が行うべきことです。その後、倒産した経緯および今後の対応は弁護士が行う旨を事務所の前など社員の目につく場所に貼り出します。
その後の債権・債務に関する処理は、基本的に弁護士が行います。ただ、会社が倒産したことを知らずに取り立てを行う業者もいるかもしれません。そのような業者と鉢合わせにならないよう、事前に弁護士に相談しておくようにしましょう。