はじめに
10月28日(金)、日銀の金融政策決定会合で金融緩和の継続が決定され、その後、黒田日銀総裁の記者会見が始まると、それまで146円半ばで推移していた米ドル/円は米ドル高・円安へ大きく動き出しました。これは、最近の黒田日銀総裁会見後の「お決まりパターン」のようになっていますが、実は「間違う」リスクがあるということを、今回は説明したいと思います。
円安は日銀の金融緩和のせいなのか?
米ドル/円は2021年1月の102円から、2022年10月には一時150円を超えるまで大幅な米ドル高・円安が展開しました。これについて、日銀の黒田総裁が頑なに金融緩和にこだわっているためと考えている方も少なくないかもしれません。
そこで、2021年1月からの米ドル/円に、日本の金融政策を反映する2年債利回りを重ねたのが図表1です。本当は重ねるまでもなかったのですが、日銀はゼロ金利政策を続けているので、日本の2年債利回りもゼロ近辺での横這いが続き、その意味では大幅な米ドル高・円安を説明できるものでは全くありませんでした。
円安と日本の金利はそんなものじゃないか、と考えた方に確認してもらいたいのは、2013年からの両者の関係です。2013年3月に黒田氏が日銀総裁に就任し、「アベノミクス3本の矢」の一つ、大胆な金融緩和を行うと円安も大きく広がりました(図表2参照)。
以上のように見ると、確かにかつては黒田発言と、それに伴う日銀の金融政策が米ドル/円の行方を決めていたということがありました。ところが、図表1で見たように、最近の米ドル/円の動きは、日銀の金融政策では説明できなくなりました。そうであれば、日銀のトップである黒田総裁の発言で円売りに動くということは、論理的に矛盾があることから、持続性が限られるのではないでしょうか。
日銀の金融政策で説明できなかった最近にかけての米ドル高・円安。それは米金利上昇、とくに米利上げを織り込む米2年債利回りなど、短中期金利上昇でかなり説明出来そうでした(図表3参照)。
以上からすると、米ドル高・円安がさらに続くか、そろそろ終わるか、それを決めるのは日銀ではなく、米国の中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)の影響が大きいということになるのではないでしょうか。