はじめに

課税事業者になるべきか、どう判断すればよい?

──課税事業者になるか免税事業者のままか、いつ変更するのか、判断を迷っている方も多いと思います。方向性を決めるための判断軸のようなものはありますか。

かじがや:明確な基準はないですね。先ほど小島先生もおっしゃってましたが、まずは課税事業者になった場合の消費税を試算した上で、その金額を払えるのか払えないのかイメージをつけておくべきだと思います。漠然と怖がっているよりは、自分で概算を出してみて判断するといいのではないでしょうか。

──税金の試算や課税事業者への変更手続きは、専門知識のない個人でも可能でしょうか?

小島:前年に申告されている方であればすでに数字は出ていますので、そこから消費税分の10%を引いて計算するだけなのでそこまで難しい話ではないと思います。

かじがや:自宅兼事務所の家賃など消費税のかからないものもあるので、そういったものに気を付けておけば大丈夫だと思います。

小島:課税事業者への変更手続きも、インボイス制度が始まる段階であればインボイスの申請書を出すだけで課税事業者になりますので、別の書類を用意する必要もありません。来年は様子見をしたいという方は若干手続きが増えますが、税務署で質問すれば答えていただけるくらいのものです。

かじがや:ただ、居住用の不動産を貸している人や、土地を売った人などは要注意です。課税売上割合というものがあり、非常に計算がややこしくなります。たとえば、よくあるケースですと自宅兼事務所にしていた物件を売って引っ越した場合は、土地の部分の売上なども非課税売上になってしまいます。

作業量的に考えるのであれば、インボイスの書類を出して簡易課税で処理していくのが一番簡単ですね。

取引先とのコミュニケーション

──取引先に免税事業者との取引を続けるか聞きにくい方も多いと思いますが、アドバイスはありますか?

小島:結局はコミュニケーションの問題だと思います。担当者レベルで決められる話ではなく、相手側の企業での決まりがあってルールが作られていくものです。なので、現段階ではどのような取り決めになっているかを質問してみるといいです。

企業によっては、個人事業主の方に向けて情報を伝えるための企画をされているところもあります。対象の方が多い企業さんであればインボイスの説明会を開いて、会社の方針を伝えつつ個別対応をしていくところもあるようです。

かじがや:まだ納得がいかない、落としどころが見えていないという方もいるかと思いますが、インボイス制度についてしっかりと理解しておけば、追加で税金を払うのではなく、これまでは免税状態にあったものをちゃんと処理していく状態になるだけだということが分かるはずです。

かんたんにいうと、今まで通りであれば企業側に負担が増える、今まで通りいかないのであれば自分の負担が増えるということです。自分だけが損すると思ってしまうと相手側がさらに負担することになってしまうので、その視点は持っておくべきです。

小島:企業側の方も、発注するときに消費税の負担をしなきゃいけないかどうかということを考えて、双方納得できる金額を決めて発注しないといけません。

インボイス制度ってなに? そんなあなたの為の入門書『会話でスッキリ 電帳法とインボイス制度のきほん』