はじめに
DAOの課題は山積み
DAOは分散型金融(DeFi)が流行した2020年後半から特に注目されるようになりました。主要レンディングプラットフォームのコンパウンドがガバナンストークンを発行し、他のプロジェクトがこれに追随する動きをみせたためです。暗号資産情報サイトのコインマーケットキャップではDAO関連のトークンが約180以上リストされており、掲載されていないものも含めればその数はさらに多いでしょう。
このようにDAOは暗号資産市場を中心に注目される一方で課題も山積みです。一つはDAOの所在国が不明瞭であるため効果的に規制することが難しいということです。米国ではガバナンストークンを保有するDAOの創業者が米国所在であることを理由に規制違反を訴えた事例はありますが、その判断についても当局者の間では賛否両論となっており、規制の方向性は定まっていません。
次に富の偏在リスクがあるということです。DAOではトークン保有量に応じて投票パワーが決定するため、DAOの立ち上げ当初は運営が実質的な権利を握ることがほとんどです。そこからオーナーシップをユーザーへ移譲していく流れが一般的となっていますが、規模の小さいDAOの場合には大口投資家によって突如として運営が乗っ取られるリスクがあります。
その他にも悪意あるユーザーを排除できないリスクがあります。多くのDAOではメンバー同士のコミュニケーションツールとしてディスコードというSNSを活用していますが、管理者がいないことをいいことに、グループ内でフィッシング詐欺などを仕掛ける事例が起きています。日本でもお笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣氏が立ち上げたDAO内で詐欺被害が発生し、問題となっています。
DAOはみんなで組織を良くしながら、みんなで利益を享受できる理想的な組織かもしれません。企業とは別の働き口となり、私たちの労働のあり方を変化させる可能性もあるでしょう。しかし、社会に普及するためには会社法に類する形でDAOを定義することがまずは必要です。その意味でデジタル庁のWeb3.0研究会がDAOをどのように評価するのか注目したいです。