はじめに
肝炎→肝硬変・肝臓がんに
肝臓の炎症が6か月以上続いている状態を「慢性肝炎」と言います。その原因としていちばん多いのは肝炎ウイルスです。B型、またはC型肝炎ウイルスに感染すると、一時的な炎症(急性肝炎)で治ることもありますが、治りきらずに長引いた場合、慢性的に炎症が続くことがあるのです。
このほか、アルコールや食生活の乱れ、運動不足などの生活習慣が原因になることもあります。
肝臓で慢性的な炎症が起こると、肝臓の細胞が壊される→修復される→壊される→修復される……と破壊と再生が繰り返されることになります。すると、細胞が正常に修復されず、線維成分が蓄積して「線維化」が起こります。
結果、肝臓の組織の柔軟性が失われて硬くなり、肝臓の機能が低下することに。
これが肝硬変です。肝硬変になると、肝がんを発症しやすくなることもわかっています。
慢性胃炎→胃がんに
おもにピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)によって起こる「慢性胃炎」は、その名の通り慢性炎症による病気のひとつです。
多くの場合、ピロリ菌は子どものころに感染すると言われていますが、感染すると多くの人は胃炎を発症します。けれども、そのとき自覚症状がある人はほとんどいません。
胃炎というと、胃がキリキリ痛んだり、胸焼けや吐き気が起きたりといった症状を思いうかべるかもしれませんが、それは暴飲暴食やアルコールのとりすぎなどによって起こる急性胃炎(急性炎症)です。
ピロリ菌による慢性胃炎の場合は、胃もたれやむかつきなどの症状が出ることもありますが、強くなかったり、人によっては症状がないこともあるのです。
自覚症状がないなどの理由で、慢性胃炎の状態を放っておくと、慢性肝炎と同じように胃の粘膜の組織が変化して、うすくやせて萎縮する「萎縮性胃炎」になることがあります。さらに、胃粘膜の萎縮が進むと、そこががん化して胃がんになる人がいることもわかっています。
動脈硬化→心筋梗塞→脳梗塞に
動脈硬化は、弾力があってしなやかな血管が、硬くもろくなることです。新品のホースはやわらかく弾力がありますが、古くなったホースが硬くなって破れてしまうようなものですね。
いままでは、血管の中に過剰な脂質がたまることが原因とされてきましたが、最近では、慢性炎症がその発症や悪化に関係していることがわかってきました。
内臓脂肪型肥満などによって血管に慢性炎症が起こると、血管の壁が傷つき、そこにコレステロールが入り込みます。すると、これを排除するために白血球が集まってきて、コレステロールを食べます。
結果、コレステロールを食べて死んだ白血球の死骸と、残ったコレステロールがたまって、血管壁にコブ(プラーク)ができてしまいます。このとき、血管の線維化も起こって、血管が硬く、柔軟性がなくなってきます。
慢性炎症が続けば、血管にできたコブは大きくなり、動脈硬化が進行していきます。最終的にプラークが破裂すると、その傷口を修復するために血液の塊ができて、それが血栓となり、血管をつまらせてしまうことに。これが心臓で起これば心筋梗塞、脳で起これば脳梗塞となってしまうのです。
慢性炎症が、知らず知らずのうちに、命にかかわるような病気を引き起こすリスクがあることをご理解いただけたでしょうか?
慢性炎症は、体の機能を低下させるため、すぐに病気にならなかったとしても、体の調子を悪くする原因にはなります。
医療施設では「どこも悪くない」と言われても、「なんとなく調子が悪いんだよな……」と感じたら、あなたの体の中では慢性炎症が悪さをしているのかもしれません。