はじめに

銀行業界のトレンド(2)通帳

続いては預金通帳について。そう遠くない未来には、紙の通帳が無くなる日が来るかもしれません。

通帳は発行すればするほど銀行は困る

実は、預金通帳を発行すると銀行は費用が発生するので、できれば無くしたいのです。銀行は預金通帳は1冊あたり、1年に200円の印紙税を納めなければいけないからです。皆さんもお手元に通帳があれば、表紙の裏などを見てください。直接印紙が貼ってあるか、印紙に代わる文言があるはずです。

実務的には銀行が保有する預金口座数をもとに、1口座当たり1年に200円印紙税を納めているのですが、銀行全体にすると負担も大きいわけです。そこで銀行は対策として「未利用口座の手数料」を取るようになっています。

未利用口座に手数料がかかるようになった理由

1年以上など、一定期間入出金などの動きがない預金口座は「未利用口座(不活動口座などとも)」として、銀行は手数料をもらうようになりました。最初にメガバンク、そして地方銀行や信用金庫などこの動きは加速していますし、これからも続くでしょう。

そもそも銀行に限らず、大手が何かをすれば中小もそれに追従するのはよくあることです。未利用口座手数料も、いつかは振込手数料やATM手数料と同じように、利用する側も違和感を覚えなくなるかも知れません。

手数料がかかるようになったのは、一つは印紙税に代表される維持経費の問題ですが、それ以外にもネットバンキングを普及させたい意図もあります。

ネットバンキングを進めたい銀行の狙い

スマホやパソコンを使って、顧客自らが様々な手続きをできるのがネットバンキングの便利なところです。さらに通帳レスにすれば未利用口座手数料を心配する必要がなくなります。また振込手数料やATM手数料もネットバンキング利用者は優遇してもらえる場合もあるので、メリットはあります。

顧客のメリットだけでなく、銀行にもメリットが多大にあるのです。なぜかと言えばネットバンキングを利用する人は、口座の動きもネットで見ることができるので、そもそも通帳がいらないのです。

ですから、このように通帳が不要な顧客を増やせば口座を維持する経費が削減できますし、しかも昔なら窓口で対応していた振込や支払いなど「顧客が自分で済ませてくれる」ので、人件費をはじめとして経費削減につながるので、ネットバンキング利用者の手数料を少しくらいディスカウントしても問題ないわけです。


ここまで、変化を続ける銀行のトレンドを解説してきました。とはいえ、仕方ないとあきらめるのではなく、有効活用することも考えられます。

例えば資産運用の相談をしたいと予約して来店すれば、商品勧誘だけでなく金融商品について、あるいは市場動向から世界情勢まで、自分に役立つ情報を得ることも可能です。自分の投資に役立つ情報を、無料で得られるかも知れないわけです。現役銀行員の本音としては、契約までしていただきたいのですが、話だけ聞いて契約にいたらなくても怒る銀行員はいませんのでご安心ください。

このように、変わっていく銀行のトレンドを自分にとって有利に活用するのが、銀行との上手な付き合い方になっていくのかも知れません。

この記事の感想を教えてください。