はじめに

2019年に大きな話題となった「老後2,000万円問題」。お金に困らない老後を迎えるための貯蓄は万全ですか? このままではいけない、と考えて、NISAやiDeCoなど税制優遇制度を利用して投資を始める方も多いようで、2022年6月末時点のNISA口座数は約1,700万口座で同年3月末時点より3.7%、また2022年10月末時点のiDeCoの加入者数は約270万⼈で前年同期比で121.7%といずれも増加傾向にあります(※)。
特に、結婚や出産のような新たなライフステージを迎える方にとって、将来の資産をどうするかは気になるポイントではないでしょうか? A子さんもその1人のようで、仕事で頼れる先輩のB助さんに相談したのですが……。
※金融庁「NISA口座の利用状況調査(2022年6月末時点)」、iDeCo公式サイト「加入者数等について(令和4年10月時点)」より


A子:そういえば、B助先輩って投資はやってますか?

B助:い、いきなりどうしたの?

A子:だって、いま投資がはやってるじゃないですか。周りで始めてる人も多いし、ニュースでもよく聞くし。

B助:たしかにね……。もちろん数年前からやってるよ、やっぱり老後のこととか気になるしね。

A子:本当ですか、じゃあいろいろ教えてくださいよ! いま結婚を考え始めていて、将来に向けてちゃんと資産運用していきたいなって思ってるので。

B助:……ごめん、本当はつみたてNISAの口座を開設したけど、仕事が忙しくてほとんど見られてないんだ。

A子:えっ、そうなんですか!?

B助:毎月ちょっとずつお金を入れてるものの、どんな仕組みになってるか分からないし、教えられるような知識も無いんだ。いわゆる、ほったらかしってやつで……。

A子:仕事ではしっかり者なのに、頼りにならないですね……だったら一緒に勉強しましょうよ!

吉岡 亜利紗(以下、吉岡):今から投資を始めたいなら、私にお任せください!

A子B助:(だ、誰……?)

吉岡:はじめまして、ブラックロック・ジャパンの吉岡です。これから投資を始めたい、でも仕事が忙しくて投資に割く時間があまり無い方にピッタリの資産運用について、私が詳しく解説していきますね!

A子:ちょうど私が知りたかったお話です!

B助:いきなりでちょっとビックリしましたが、よろしくお願いします!

吉岡 亜利紗
ブラックロック・ジャパン株式会社
ウェルス・リタイアメント・ソリューション部
ヴァイス プレジデント
大卒でメガバンクに就職し、法人営業として企業融資などを担当。その後外資系の保険会社にて代理店営業を経験後、ブラックロック・ジャパン入社(現職)。銀行や証券会社のお客様を担当し、イベントやセミナー講師なども務める。企業理念のひとつである「顧客第一」を常に心掛けている。

投資をしないことがリスクにつながることも

吉岡:先ほど「投資がはやっている」とお話をされていましたが、どうしていま投資が注目されていると思いますか?

B助:注目されている理由? 考えたこともなかったな……「老後2,000万円問題」が話題になった時に、何となく周りが始めてるから自分も始めただけだったよ。

A子:最近、ニュースでよく「貯蓄から投資へ」という言葉を聞く気がしますが、何か関係はあるんですか?

吉岡:B助さんがおっしゃった「老後2,000万円問題」ですが、これは2019年頃の金融庁の報告書で「老後20~30年間で約1,300~2,000万円が不足する」という試算を発表したことによる、老後の資産形成に関する問題のことですね。多くの人が漠然と年金で生活はなんとかなると思っていた中で、実は自助努力で老後のお金を貯めていかなければ必ずしも豊かな老後は送れないことが明らかになり、さらに具体的な数字が出てきたことによってこの問題はフォーカスされるようになりました。

B助:たしかに当時、「今の収入で老後のために2,000万円を貯めろ」といわれて、ちょっと不安になっちゃったんですよね。

吉岡:政府からも「資産所得倍増プラン」が出されるなど、最近は特に資産運用への関心が高まっていることもあり、A子さんのおっしゃる通り「貯蓄から投資へ」という流れが注目されつつあります。特に2022年に入ってからはインフレや円安、食料品や日用品の値上げなど生活に直結するお金の問題も多く発生しており、皆さんこのまま貯金をするだけではいけないのではないかと考えているようです。

A子:投資にはメリットもあればデメリットもあるって聞いたことがあるんですが、実際どうなんですか?

吉岡:そうですね。メリットでいえば、やはりお仕事の給料以外の収入が持てるのは大きなメリットになると思います。また、投資をすることで世の中の情勢に関してすごく敏感になり、身近に感じられるようになると思います。為替の状況や世界経済に目を向ける機会が増えるため、外向きの関心が増えてくるのはよくお聞きするところです。

B助:たしかに。給料がいきなり倍になることはないけれど、投資の利益で今以上の収入を得られる可能性はありますもんね。そう考えると、堅実に出世してお給料を増やす以外の選択肢を持てるのは夢があるなぁ。

A子:でも、やはり投資は失敗すると損してしまうんですよね? せっかく貯めた貯金が減ってしまう可能性があるのは、やっぱりリスクがあって怖いと思っちゃいますね……。

吉岡:2022年10月には1ドル150円を超えた、なんてニュースも見られたかと思います。円安などで円の価値が下がって、実際に「海外旅行に行けない」「行っても買い物ができない」なんてこともあるので、貯金していれば絶対に安心ということもないと思います。投資は、自分だけではなくお金にも働いて貰うという発想なんです。

B助:なるほど……それが「貯蓄から投資へ」ということなんですね。

吉岡:投資に失敗はつきものです。ただ、タイミングをねらって投資をして短期で稼ぐというようなリスクが高い方法や商品は避け、時間をかけてじっくりと行うのが理想です。そのため、投資を始める際には少額から少しずつ始めるか、積立投資という形で始めていただくのが良いかと思います。

A子:投資で失敗したら人生が終わってしまう……なんて思っていましたが、たしかに少額であればできそうですね。でも少額といっても、どの程度から始めるのがいいんですか?

吉岡:まず、価格の動きをどれくらい受け入れられるか(リスクを受け入れられるか)という観点が重要かと思います。たとえば自分の貯金のうち、どのくらいまでであれば投資に回しても許容できる額なのかをしっかりと判断することが大切です。投資をする金額も、ご自身でイメージの湧く金額をゴールに設定しながら少額から始めるのがいいでしょう。

A子:想像できる額かぁ……まず私は、毎日のランチ代を少し節約して投資に回してみようかな?

B助:投資といえば、よくSNSや書籍で「米国株がいい」なんて見かけるけど、こういった円安の中だと、海外企業や外貨へ投資するのってリスクじゃないんですか? 海外の企業についてあまり知らないし、よく分からないものに投資するのって少し怖くて……。

吉岡:円の価値が下がっていく中で、円だけを持っていること自体がリスクと考えることもできます。今回のような円安になる場面が今後もあることを考えると外貨に換えておくのは安心を得るひとつの手段だと思います。

A子:海外に目を向けるのもひとつの選択肢なんですね。たしかに、投資の勉強をしていると世界の経済への興味が高まりそう。理解が深まれば、怖さも少し薄まってきそうな気がしますね。

吉岡:アマゾンやアップル、アルファベット(グーグルの親会社)のような企業はすべて海外の会社ですが、 すでに私たちの生活の中に溶け込んでいますよね。なので、海外企業だからよくわからないということはな く、そうした企業に投資するのも、日本企業に投資するのもあまり変わらないと思います。それよりも企業が 提供している製品やサービスの競争力の方が重要です。

B助:いまインフレが進んでいる中で、長期目線の積立投資を続けるのは家計を圧迫しちゃうんじゃないのかなって、ちょっと気になってしまうのですが……。貯金していたほうが、いざというときにも使いやすそうだし。

吉岡:たしかに、積み立てていくというのは定期的にお金が出ていくと捉える方もいるかと思います。でも、こちらのグラフをご覧ください。

吉岡:黄色いグラフは過去30年間、毎月1万円を積み立てていった場合の額、赤いグラフはその預金額で米国株式(S&P 500)に積立投資を行った場合の評価額の推移です。30年で約6倍の差が出てきました。当然、長期目線で投資した場合、一時的に上がり下がりはありますが、あまり金利もつかない中で銀行に預金をするよりも、毎月少しずつでも投資に回した方が最終的な利益に差が出てくるというデータです。

B助:1万円って、いままさに毎月投資に回している金額だけど、投資先の値動きによってはこんなに差が出るんですね!

A子:じゃあ積立投資は、長くやればやるほど利益が大きくなるものなんですか?

吉岡:一概にそうとは言い切れませんが、「ローリングリターン」という考え方があります。

吉岡:こちらは2002年から2022年の間に、1年、5年、10年投資をして、その間のリターンがプラスになったかマイナスになったかを計測したものです。投資期間を延ばすことで、マイナスになる回数がどんどん減っていきます。この場合は10年ぐらい続けることでマイナスはほとんどゼロになりました。そのため、短い期間に起きる値動きの大きな波は長い期間でみるとならされて小さくなり、長くやればやるほど実はリターンが安定する傾向にあります。

A子:投資先次第であるものの、インフレや円安を過度に気にするんじゃなくて、長く投資を続けた方が結果的にリスクを抑えることができるんですね!