はじめに
生涯投資枠はどう使うべきか?
今回の改正では「生涯投資枠」とも呼ばれる非課税保有限度額が1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)と設定されました。例えば、月3万円ずつ積立を行うと50年間、月5万円ずつ積立てれば30年間で生涯投資枠1,800万円を使い切りますので、そこで積立が終了します。
もちろん積み立てる金額は、変更も可能です。年間360万円が上限ですが、それを超えない範囲で積み立てる金額を変更しながら、1,800万円を使い切るまで何年でも継続ができます。
1,800万円は大金ですから、この生涯投資枠を使いきるのもなかなか大変ですが、今回の改正ではさらにこの生涯投資枠を拡大することも可能になりました。それが「簿価残高方式で管理し枠の再利用が可能」という文言で表現されている部分です。少し難しいイメージがありますが、要は資産形成の途中で売却した金額は、生涯投資枠として復活し、その分累計投資額が増額されるという意味です。
例えば、積立額が500万円に達した時点で、お子さんの教育資金として300万円を引き出したとしましょう。すると生涯投資枠1,800万円のうち、引き出した300万円の枠が再度利用できることになるので、最終的に投資可能額は累計で2, 100万円まで拡大されます。
具体的には投資商品を売却した年末に、枠の再設定を行い翌年にお知らせされる「これから使える生涯投資枠」に反映されるそうです。とはいえ、年間投資枠360万円に、再設定された300万円が加算され翌年は年間660万円まで投資ができるという意味ではなく、あくまでも年間投資枠は360万円です。従って、いったん累計投資額が1,800万円に達した後、再利用枠300万円が追加され、累計の投資額が2,100万円までになるのだとご理解ください。
実際、お金を積み立てて、一部取り崩し、また積み立てて……ということを繰り返せば、この生涯投資枠は無限に拡大していくので、「ドデカイ非課税の財布」を私たちは手にするのです。
NISA口座は、1人1口座です。年単位ではありますが、金融機関の変更は可能です。すると、A銀行にNISA残高400万円、B証券会社にNISA残高500万円と複数の金融機関に生涯投資枠の投資残高が分散されるケースも想定されます。その中で、一部売却などが発生すると生涯投資枠の管理は煩雑になりそうですが、マイナポータルでNISA情報も確認できるようにする計画もあり、利便性も担保されるようです。
今までのNISAはどうなるのか?
一部では、今NISAを始めるのではなく、2024年を待つべきという声もあるようですが、非課税の枠を有効につかうのであれば、2023年だけであっても現行NISAを始めるべきです。なぜならば、2024年からの統合NISAと現行NISAは別ものだからです。
では、今始めるのであれば一般NISAとつみたてNISAはどちらなのかという問いであれば、つみたてNISA一択となります。なぜならば、一般NISAで上限いっぱいの120万円の投資をしたとしても、非課税期間は5年で終了し、かつ2024年以降の統合NISAに旧制度で投資した運用商品をロールオーバーすることができないからです。
そうであれば、つみたてNISAの非課税期間20年はそれでも十分長いので、ここでしっかり非課税投資をした方がメリットがあると考えます。
同様に以前に行っていた一般NISAも、5年の非課税期間が順に終わりますから、つど課税口座に移管するか、非課税期間内に売却するのかを選びます。つみたてNISAも20年間の非課税期間が終了までに売却するか、課税口座へ移管するのかの2択です。
これまでNISAを行ってきた方の中には、2024年から始まる統合NISAのために、再度口座開設をしなくちゃいけないのかと思っている方もいるかもしれません。NISA口座開設の手続きにはマイナンバーカードの提出や書類の記入などいろいろ面倒なこともあって、気が進まないと思っている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、今すでにNISA口座をお持ちの方であれば、手続き不要で自動的に統合NISA口座の開設が可能となるようです。「そうじゃなくちゃ!」とは思いますが、このあたりずいぶん利便性が高まったとうれしく思います。