はじめに

基本的には、「割高」の程度が大きいほど、何かの拍子でそれが修正に向かった場合の下落リスクが大きくなるため、買っていた場合は損失が大きくなります。このため、米ドルの場合でも割高の程度が大きくなるほど、何かの拍子でその修正が本格化することで大きく下落するリスクが高まるため、買う場合には損失を限定化するための工夫として、小まめな利益確定の必要性が高まるでしょう。

115円と150円を比較すると、150円の方が割高であることは誰でも分かるでしょう。ただし、割高と言えるのは150円まで米ドル高になったからこそであり、米ドル高の途上においては、115円でも既に米ドルに割高警戒感を抱く可能性はあったでしょう。そもそも、上述の知り合いが「いざとなるとすぐに利喰いしちゃった」のは、米ドルは既に十分割高かもしれないと、無意識のうちに感じていたからではないでしょうか。

そこで、割高の程度について、感覚ではなく、客観的な目安があれば、米ドル買いも判断しやすかったのではないでしょうか。図表2は、米ドル/円の過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)からのかい離率を2022年3月までについて見たものです。グラフが上に伸びるほど、米ドルの割高懸念が強くなりますが、1米ドル=115円程度で推移していた2022年3月はプラス10%程度でした。過去には同かい離率がプラス30%まで拡大したこともあったことを考えると、115円程度の米ドルはとくに割高懸念が強いというほどでもなかったでしょう。

図表3は、同じ5年MAかい離率を2022年11月まで伸ばしてみたものです。これを見ると、10月に150円程度まで米ドル高となったところで、同かい離率はプラス30%以上に拡大、1990年以降では最も割高懸念が高くなっていたことが分かるでしょう。

2022年のFXトレードの「間違い」の典型例は、11月以降米ドルが急落に転じたところで、それまで積み上げてきた利益が吹き飛んでしまったといった類が多かったようです。それは、図表3が示していたように、150円まで米ドル高となったところで、米ドルの割高リスクはかなり高くなっていたわけですから、小まめに利益を確定するなど、何かの拍子に割高修正が本格化し、米ドルが大きく下落することで損失が拡大することを限定化する工夫をしていなかったことが原因だったのではないでしょうか。

整理すると115円とか120円程度では、まだ米ドルはそれほど割高懸念が強くなかったので、利益確定を焦る必要はなかったのでしょう。一方で140~150円にもなると、さすがに米ドルはかなり割高懸念が強くなっていたので、今度は逆に利益を確定しないままだと、急な下落でせっかくの利益が吹き飛んでしまいかねなかったわけです。

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