はじめに

「NISA」と「iDeCo」はなんのため?

酒井:将来に向けた資産っていうと、年金があるんじゃないんですか?

有野:年金をもらえる年も、引き上げ引き下げとか話題が出てるよなぁ。でも、納めてるからもらえるんやろうけど。

山中:酒井さんがおっしゃるように、年金は納めてきた分、老後に「国民年金」「厚生年金」という形で返ってくるものですが、金融庁が取り上げたデータでは、仕事を引退した夫婦が一般的な生活を送るのに、毎月、およそ5万円が不足すると試算されているんです。

酒井:えぇ〜、なんでそんなに足りなくなるんですか?

山中:年金が足りなくなったんじゃなくて、人生が長くなったんです。日本の年金制度ができたのが60年以上前の1961年、サザエさんの時代なんですよ。その頃は男性の平均寿命が65歳前後、定年が55歳だったので、老後が10年くらいですよね? それを基準に年金制度も設計していたので、いまのように100歳まで生きると35年分も違いますよね。もちろん時代に合わせて制度も変わってきたんですけど、それでも5万円不足すると試算されているんです。

有野:足りてないのは不安な事やけど。サザエさんの時代かぁ……波平さんは54歳やもんな、俺の3歳上。55歳で定年やから、波平さんは誕生日で定年かぁ、って言いながらテレビ放送開始してから53年働いてはる。定年も60歳に引き上げられたのかな? そう考えたら波平さんがかわいそうです。

酒井:なんの話ですか(笑)

有野:平均寿命や定年とかが関係して、年金がもらえる年齢が変わったりしてきたのかって話やで。

酒井:え、そんな話してましたか(笑)

山中:仮に、ご夫婦が平均寿命まで生きたとすると、不足額が2,000万円くらいになるんですね。これが、いわゆる「老後2,000万円問題」などと言われています。

酒井:2,000万円も!? そんなに用意しないといけないんですか?

山中:生活水準や毎月使うお金の額によって、当然、必要な額は違ってきます。あくまで一般的な夫婦としてのデータですから、すべての方がその金額を貯めておかなければいけない、というわけではありませんが、1つの目安にはなると思います。

有野:2,000万円かぁ……簡単に貯められる額ではないよね。今年51歳になる僕があと9年で芸人定年ですよ、って会社に言われて、だったら2,000万円貯めないと、って動き出さないともう間に合わへんわな。先生、どうしたらいいんですかね?

山中:年金として受け取る額は、国民年金が保険料を納めた期間、厚生年金は収入額と働いた期間で決まります。年金を増やしたかったら、年収そのものを上げて多く保険料を納めるか、長く働くしかありません。

有野:長く働くのは嫌です。群雄割拠の芸能界で長く働ける自信もありません。

酒井:先輩、悲しい事言わないで下さいよ(笑) 私はタレントなので、会社員の方がもらえる厚生年金はもらえないんですよね?

山中:酒井さんは個人事業主ですよね? それなら年金は国民年金のみになるので、自分で積み立てるか、会社を設立して厚生年金を積み立てていくことになりますね。国の年金だけで足りない部分は、自分でその資金をコツコツ積み上げていく必要があります。つまり、投資をしなければいけないわけですが、その投資を助ける国の制度があるんです。

有野:キターーー! それが「NISA」と「iDeCo」ですね。

山中:その通りです! 先ほどもお話しましたが、NISAは「少額投資非課税制度」という意味で、少額だったら、投資にかかる税金をなくしますよ、だから皆さん貯蓄から投資にお金を回してくださいね、と政府が国民に利用を勧めている制度なんです。

有野:「お金を増やしていこう」って考えた場合、銀行の金利の0.002%よりは選び方によって多くなるやろうし、少額投資っていうより投資に限度額があるって思えばいいのか。なるほどね、そういうことなんか。

山中:状況がわかってくると、何をすべきか見えてきますよね。

酒井:見えてきました! 知っているのと知らないのとじゃ、全然違いますね。

次回(1月17日配信予定)は、NISAやiDeCoの具体的な特徴について聞いていきます。

有野晋哉
1972年2月25日生まれ。大阪府出身。テレビやラジオ、CM、雑誌の連載などマルチに活躍。コンビで公式YouTube「よゐこチャンネル」も開設しており、幅広い世代から支持を得ている。自身が50歳を迎えた2022年に、お金にまつわる知識の大切さに目覚め、日々勉強中。

酒井瞳
1989年5月3日生まれ。宮崎県出身。2008年4月に女性アイドルグループ「アイドリング!!!」に14号として加入し、2015年10月に卒業。その後は地元・宮崎県に関わる活動や、テレビやドラマ、YouTubeなど活動の幅を広げている。2022年2月よりジムでパーソナルトレーナーを開始。また、同年に故郷の宮崎県延岡観光大使に就任。 アイドル専用ジム「iウェルネス」ではトレーナーとしても活動している。

山中伸枝
心とお財布を幸せにする専門家 ファイナンシャルプランナー(CFP)、株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役、FP相談ねっと 代表、一般社団法人公的保険アドバイザー協会 理事。 1993年米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後メーカーに勤務。これからはひとりひとりが、自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナー(FP)として2002年に独立。年金と資産運用、特に確定拠出年金やNISAの講演、ライフプラン相談を多数手掛ける。 執筆:金融庁サイト 有識者コラム連載、50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話(東洋経済新報社)、ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本(翔泳社)他

ライター:新井奈央 / 写真:文化工房

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