はじめに
定期預金や債券投資ニーズは拡大か
YCCの運用の見直しは定期預金や国債などに、直接的に影響しています。定期預金の金利はキャンペーンや預入期間にもよりますが、ネット銀行を中心に0.15~0.3%程度と上昇傾向にあり、明確に普通預金との金利差がでてきています。
定期預金や国債は、家計でしばらく使う予定のない余裕資金、資産運用のための現金の運用先となりますが、1月5日(木)に実施された2月15日(火)発行予定の10年物国債の入札では、0.5%の利回りをつけ、いよいよ「金利のある世界」が現実となりつつあります。募集期間は1月31日(火)までです。
直近の金利状況を表したデータとして、次のグラフをご覧ください。YCCの運用の見直し後の許容変動幅拡大にもかかわらず、青色のぬりつぶし部分のうち9年・10年国債利回りが、より短期である8年物の利回りを下回っています。
アメリカの金利情勢や海外勢などの日本国債売り(空売り)と、YCC許容変動幅の上限0.5%での日銀の国債買入れとの攻防戦という構図になっており、日銀が最大の買い手となり、ほかの金融機関等はなかなか買いづらい状況が継続しています。
そのため、10年債利回りが本来の利回り水準とかいりしており、長期金利の指標としては活用しにくい側面もあるため、現実的なレートをはかる参考値として、1月6日(金)時点の国債利回りをベースに、最近話題の固定金利と変動金利を交換する「金利スワップ」(OIS)のレートを重ねて比較しています。
このOISを反映した状態で国債利回りを考慮すると、チャートなどのテクニカル分析とは別の方法として、とくに10年国債部分については、より現状に近いイメージがつきやすいでしょう。
家計の将来に備える際に重要なのは、「予想する」ことではなく「想定する」ことです。
今後、金利は上がるだろうと予想したり、金利は上がるに違いないと決めつけたりするのではなく、金利が上がるとすれば目先はどれくらいまでいきそうか、その先はどれくらいまでなのか、あるいは下がる場合はどうなのか、というように幅を持たせて想定しておきます。この方法により、将来の金利動向に合わせた対策の事前準備ができるのです。
中長期での投資環境
楽観的な見方としては、ロシアによるウクライナ侵攻の出口が近づきつつありそうで、インフレ鎮静化や賃金上昇により、徐々に消費の本格回復も期待、底堅い需要をキープできるかもしれません。またアメリカ経済のリセッション警戒感は根強いものの、日米ともに金融関連株が堅調となっており、過剰なレバレッジ解消などが起こりにくいのではないでしょうか。
日本株は、世界的な利上げ局面では消去法的に買われてきましたが、アクセルとブレーキを同時に踏みたがるのが日本らしく、増税リスクなどもあり今後は前途多難となりそうです。賃金上昇による本格的な需要回復の兆しが見えるまでは、再びデフレに陥るリスクも想定しておいたほうが無難でしょう。
筆者は今後、厳しいながらも堅調な相場展開になると考えています。2022年の「戻り売り」とは異なり、2023年は「強気の弱気」「押し目買い」スタンスです。
2023年はとくに日常の大きなニュースに気を配っていただきながら、運用資産のメンテナンスをしつつ、リスク管理をしっかりやっていきましょう。