はじめに

越境学習と越境コミュニティ

ビジネス資本や社会関係資本を蓄積するための手段として、オンラインが浸透した現代において有効なのが、「越境学習」と「越境コミュニティ(サード・プレイス)」と呼ばれるものです。何度もお伝えしてきましたが、変化の時代のキャリア開発で重要なことは、変化を自ら創り出し、その変化に適応していくなかで自己成長を持続的に行っていくことです。

勤務している会社や職場を離れ、まったく異なる環境に身を置いて働きながら新しい体験をすることで、新たな視点や知識を学びます。サード・プレイスというのは、家庭がファースト・プレイス(第1の場所)、職場がセカンド・プレイス(第2の場所)であるのに対し、それらとは関連のない第3の場所という意味です。

具体的には、他社で働いたり、NPO(非営利法人)に出向したりといった「社外留学」や、社外のワークショップや勉強会への参加、ビジネススクールや社会人大学の受講、ボランティア活動などがあります。私もプロティアン・キャリア協会の認定者コミュニティを運営していますが、メンバーは学びの意識が高く、多様性のある場となっていることから、認定者の社会関係資本の蓄積につながっています。

将来の見通しがこれまで以上に不透明になっている現代では、企業の事業活動の中で新しい価値を生み出すイノベーションの重要性が高まっています。社員に対して、社内のマニュアルで学ぶこと以上に、多様な知識と考え方を身に付けてほしいと考えるようになっています。組織に依存せずに自ら学習機会やネットワークを作り出し、自分でキャリアを構築する個人が増えていることで、企業も越境学習に積極的になってきているようです。

こうした背景から、勤めている会社や所属している組織を越え、あるいは業界さえも越えて学ぶことが推奨されているわけです。

興味深いデータもあります。将来のキャリア展望を明るく感じるのは、ボランティアNPO、社外ネットワークのコミュニティに属している人で、社内の限られたコミュニティにしか属していない人は、将来展望を明るく持てないという調査結果も出ているのです。
 
なお、一般的な越境学習には4つのタイプがあります。

○出向型 (一般的な形態・期間:1か月〜2年ほど)
本業先に戻ることを前提に、一定期間受入企業に勤務するスタイル

○兼業型 (一般的な形態・期間:週2日×3社など)
プロジェクトや専門分野をベースに、複数の企業で同時に働くスタイル

○副業型 (一般的な形態・期間:週4日を本業、週1日を兼業先など)
本業を持ちつつ、週や月ごとに決まった日数・時間数だけ他の企業などに出勤・参画するスタイル

○プロボノ型 (一般的な形態・期間:就業時間後に月2回など)
本業を持ちつつ、平日の夜や休日などを活用して他の企業などのプロジェクトに無償で参画するスタイル

4つのタイプはあくまで基本的なスタイルというだけで、ポイントは「枠」を超えて学ぶということです。社内の学びは、仕事に必要なことだけに絞られがちです。目の前にある仕事をこなすための知識やスキルだけを身に付けて、終わりになってしまうことも多いでしょう。

越境学習のメリットは、転職や起業をすることなく学習できるところにあります。現状のキャリアを継続しながら、新しい学びを得ることができるのです。また、異なる環境で働くことで、自分のキャリアを客観的に見つめ直す機会にもなります。今後のキャリアを考えるときに、自分のやってきたことを違った環境で捉え直すことで、新たなモチベーションを作り出せるかもしれません。学びに行った先で社会貢献の意義を見出すかもしれないし、新たなるつながりを作ることができるかもしれません。

こうした新しい知見、経験は、これまでの「枠」を超えることでしか得られません。知の探索につながる体験となり、場合によっては、知の深化につながることもあるでしょう。

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