はじめに

香りはダイレクトに脳に効く

あらがうことのできないホルモンの影響や、他人のネガティブな感情にまで同調するほどネガティブに敏感な脳のせいで、私たちが「イライラする」「不安になる」「集中力が低下する」といった「心の不調」に陥りやすいのは確かなことです。

だからこそ大事なのが、「フキハラ」対策と同様に、効果のあるストレスコントロール法を知っておくことです。

体を動かす、美味しいものを食べる、温泉に入るといった、巷でよく言われるストレス解消法も、人によっては大きな効果があります。

また、自分なりに良さそうだと思うものがあれば、いろいろと試してみて、効果が実感できるものがあれば、心の不調を感じたときの「やることリスト」に入れておくとよいでしょう。

さて、「脳波」の専門家である私と、コスメを開発している企業との共同研究で得た客観的で明確なデータからその効果を確信しているのは、「香り」です。ダイレクトに脳に作用して、ホルモンを変化させる効果が「香り」にはあります。

ここからは、その合同研究で明らかになった「感情を変える香り」についてお話ししていきましょう。

「心の不調」を軽減するのはネクタリンの香り

「感情を変える香り」を解明するため、私たちは、被験者にさまざまな香りを30秒間嗅いでもらい、香りを嗅ぐ前と嗅いでから3分後の感情を比較するという実験を行いました。

「ストレス度」を示す脳波に大きな変化が見られたのがデータ32です。

この結果を出したのは、ネクタリン(もも)の香りでした。

ネクタリンの香りを嗅ぐ前に55%だった「ストレス度」を示す脳波は、3分後には50%まで減っています。これは、ネクタリンの香りがホルモンになんらかの影響を及ぼしている何よりの証拠です。

第3章で紹介した「好きな香り」を嗅いだときの8%減に比べるとやや物足りなく感じるかもしれませんが、ネクタリンの場合は被験者14 人中の11人、つまり、約80%の人に効果が出ています。「好きな香り」のほうは万人に効くわけではありませんから、この汎用性には大きな意味があると言えるでしょう。

同様にストレス度を5%減らす方法としては、15分散歩をする、足湯に20分程度浸かる、絶叫系マシンが好きな人ならジェットコースターに1回乗る、歌うことが好きな人がカラオケで思い切り歌う、などが挙げられます。でも、たった30秒でそれと同じ効果を出すのだとすれば、「ネクタリンの香り」は「心の不調」に悩まされている人の強い味方になるのではないでしょうか。

しかも驚くのは、その効果の持続度です。

人は「ストレス」に敏感なので、、足湯やジェットコースター、カラオケなどで一時的にそこから解放されたとしても、ちょっとしたきっかけで、またストレスを感じてしまう、というのはよく見られる現象です。

ところが、ネクタリンを嗅いだ被験者の「ストレス度」を示す脳波は、短い人でも2時間、長い人の場合はなんと4時間もの間、弱い状態のままキープされていたのです。

もちろん、ストレスの上昇につながるようなインプットが多ければ効果は半減しますが、ネクタリンの香りを嗅いで穏やかに過ごすことができれば、「心の不調」をかなり軽減させることができるでしょう。

「フキハラ」対象にも有効といえます。被害にあっても被害を小さくしたり、あるいは自分が加害者になるのを防ぐのに役立つことでしょう。

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