はじめに
「体の痛み」は「ストレス度」で把握できる
第三者が把握しにくいのは、「心」だけでなく、「体の痛み」も同じです。
例えば血圧であれば、血圧計を使うことで高いとか低いとかを客観的な数値として見ることができますが、「痛み計」というものは存在しないので、本人からの自己申告に頼ることになります。
そこで、例えば「MAXの痛みが10だとしたら、今の痛みはどれくらいか」といった指標を使ったりするわけですが、このような質問をされても、答えに窮するケースは多いのではないでしょうか?
例えば、「昨日の痛みと比べて今日の痛みはどれくらいか」などと聞かれても、昨日の痛みのレベルの記憶が薄れてしまっている場合もあるでしょう。
でも、脳波を見れば、その人がどれくらい痛みを感じているかを客観的な数値で見ることができます。
痛みが強いほど、強い「ストレス」伴うので、「ストレス度」を示す脳波を測定することで、「その痛みを今、どれくらい辛いと感じているか」がわかるのです。
もちろん、前日のデータと比較すれば、辛さが落ち着いているのか、増しているのかも判断できるでしょう。また、鎮痛剤などの効果を確かめることにも役立ちます。
もちろん、「ストレス」はあくまでも「ストレス」であって痛みそのものが数値化されているわけではありませんが、本人の辛さに応じた対処を考える際には、脳波から「ストレス度」を測定することはとても役に立ちます。
また、周りに気を遣ったり、強がったりして、痛みを我慢している人の「本当のつらさ」を理解するためにも、脳波によって数値化される「ストレス度」は有用だと思います。
肩こりがあるだけで「ストレス度」が3倍になる!?
さて、多くの人が日常的に感じる痛みといえば、肩こりや腰痛が挙げられますが、それらを自覚しているとき、どれくらいの精神的負荷がかかっているのでしょうか。
データ30は、「肩こりを自覚している人」と「肩こりの自覚がない人」に同じ仕事を3時間してもらい、その前後で「ストレス度」を示す脳波がどのように変化したかを比較したものです。
「肩こりの自覚のある人」は、「ストレス度」を示す脳波が70%と、かなり強く出ています。
これは「肩こりの自覚のない人」の20%弱の3倍以上です。
つまり、「肩こりの自覚がある人」は1時間仕事をするだけで、「肩こりの自覚がない人」が3時間以上働いたときに感じるのと同レベルのストレスを感じてしまうというわけです。
気がつかないところで「フキハラ」の要因が発生しているかもしれません。データ31は、同様に「集中力」について調べてみた結果です。
「肩こりの自覚がない人」は、3時間たっても「集中度」を示す脳波の数値が80%とかなりの強さなのに、「肩こりの自覚がある人」は20%程度という弱さです。脳波を見れば、「肩こりの自覚のない人」の4分の1しか集中できていないのは明らかなので、仕事の進度や精度がかなり下がるのは間違いありません。
先ほどもお伝えしたように、肩こりがネガティブな感情や不機嫌を生み、また、「フキハラ」の要因にもなりうる事実も明らかになりました。
肩こりの痛みを抱えながらの作業がこれほどまでの「心の不調」を生む可能性があることに、どれだけの人が気づいているでしょうか?
たかが肩こりだと甘く見て放置していると「心の不調」が顕在化して、より深刻な症状が現われてくる危険もありますので、決して看過するべきではありません。
また、「心の不調」がパフォーマンスに大きく影響することも脳波は物語っているのですから、肩こりに限らず、何らかの「痛み」を自覚しているときは、仕事を中断してでも、まずはその痛みを取り去ることから始めるほうが、結果的には仕事の効率も上がるはずです。