はじめに

NISAで税金を損してしまうケース

iDeCo同様、税金で得すると言われるNISAですが、こちらの掛金は控除の対象となりませんので、毎年の所得税、あるいは住民税での還付メリットはありません。NISAの税優遇は、運用益に対する税金が引かれないということですが、利益を得た際にのみ税のメリットを受けます。

例えば、NISAで運用していた商品を売却して10万円の利益が出た場合、通常はそこから20.315%の税金、すなわち20,315円が差し引かれ、手元には79,685円しか残らないのですが、それがまるまる10万円手元に入るので、やはり大きなメリットです。

しかしNISAで損失を被るとデメリットしかありません。それは通常行える損益通算、あるいは損失の繰り越しがNISAではできないからです。

例えばA、Bという2つの証券会社の課税口座で運用していたとしましょう。Aでは10万円利益が出て、Bでは8万円の損失がでました。それぞれ特定口座、源泉徴収ありという設定をしていると、Aの利益に対して税金が引かれます。しかし、この2つの口座の持ち主からしたら、年間の利益は10万円ではなく、Bの損失がAの利益のうち8万円を打ち消しますから、差し引き2万円が本当の利益となります。

このような場合、AとBの「損益を通算」し確定申告にて税金を再計算することができます。これが損益通算です。株式の売買や、投資信託の売買を複数の金融機関で行っている方にとっては、すべての損益を通算できるのは納得感があります。

しかし、NISAは口座として全く独立しているので、その他の口座での損益と通算することができないのです。

損失の繰り越しというのは、マイナスの貯金ができるという意味です。例えば令和4年に30万円の損失を被ったとします。これを確定申告しておくのです。

翌令和5年は運用がうまくいって、利益が20万円出たとしましょう。本来であれば、この利益に対し20.315%の税金が引かれますが、ここでマイナスの貯金と相殺します。つまり、令和4年の損失30万円が令和5年の利益20万円を打ち消し、税金の支払を不要としてくれるのです。

それでもまだ損失10万円分が相殺されず残っていますから、さらに翌年以後の3年間、この場合は令和5・6・7年分にわたり損失を繰り越し、その分の利益を打ち消し、税金を払わずに済むことができます。まさに「損失の有効活用」と言えます。

しかし、NISAはここでも先ほどと同様の理由で、NISAで被った損失は、繰り越し控除ができないルールになっています。

上記のようなNISAの特徴を改めて考えると、やはりNISAは長期で腰を据えて運用し、しっかり利益を育てるための制度だ、ということを再認識できます。

賢い納税者になろう

税金というと、ついつい「引かれるもの」「取られるもの」と思いがちですが、内容を理解して「納めるもの」という意識を持ちたいものです。特にお勤めの方は、毎月の給与から源泉徴収され、年末調整もなんとなく提出して、12月の給与で還付を受けたらラッキーのような気持ちでいると、一体得をしたのか損をしたのか分からなくなってしまいます。また「税制優遇」と一言で言っても、それは制度によってさまざまなので、どう優遇されているのか正しく理解することも必要です。

2月、3月は確定申告に関する情報をよく目にする時期です。確定申告をする方も、する必要がない方も、たまには税金についての知識をアップデートしてみるとよいでしょう。

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