はじめに

日本の成長性が乏しかった要因とは?

6月23日金曜日、日経新聞は1面トップで「設備投資 最高31兆円」と報じました。2023年度の設備投資動向調査で、全産業の計画額は前年度実績比16.9%増の31兆6322億円となり、当初計画ベースで初めて30兆円を超えたといいます。電気自動車(EV)の世界的な需要拡大や人手不足の中で人工知能(AI)など生産性を向上させるデジタル分野の投資も活発になってきています。

これまで日本の成長性が乏しかったのは企業の投資不足が一因でした。1990年代はじめまでは、家計部門が主要な資金余剰部門であり、資金不足である企業や海外等に供給していました。企業部門は1990年代初めまでは資金不足でしたが、それ以降資金余剰に転じました。稼いだ利益の範囲内でしか設備投資をしません。企業はおカネをため込む一方で、日本経済は企業の資金余剰≒投資不足≒低成長という悪循環に陥りました。

この構図が変わろうとしています。背景は、いろいろな要素がうまくかみ合ったから、としかいいようがありませんが、そのうち大きなものを挙げましょう。まずインフレです。日本は何年も前からずっと0%金利でしたが、足元でインフレになったせいで「実質金利」がマイナスになりました。こうなったら借金の妙味が出てきます。マイナス金利というのは借り手が利息をもらえるようなものだからです。それこそ、おカネを借りてでも投資したほうが得だという状況になっています。

企業にとっても設備投資のニーズは多様化かつ喫緊の課題になっています。人手不足を解消するための自動化・機械化、DX、GXを推進するための投資などコロナ禍で抑制されていた需要が一気に動き出している感があります。

もうひとつは東証のPBR改善要請です。手っ取り早く企業評価額を上げることを目論んで、増配や自社株買いなどをため込んだキャッシュを使って実施する企業が後を絶ちません。小手先の財務テクニックでは企業価値は高まらないという冷めた意見もありますが、単に使い道のないキャッシュを抱きかかえているよりはずっとましです。

実質マイナス金利や東証の要請などに背中を押されるようにして企業がおカネを使い始めました。企業は資金余剰の状態から資金不足の状況へと変わりつつあります。それは銀行の貸し出しを増加させ、設備投資を増やし、日本経済を好回転させる原動力になるでしょう。これが日本でも成長期待が高まったとする根拠です。

株価はまさにこのような日本経済の大転換を捉えて33年ぶり高値にあります。けっしてバブルではありません。

この記事の感想を教えてください。