はじめに

認知症が発症すると契約行動が不可に

井戸:先ほども触れましたが、「終活」には両親をはじめとした家族のための終活と、自分のための終活の2つがあります。有野さんくらいの世代だと、その両方を考える必要がありますね。終活っていうと、なんとなくネガティブというか、嫌なイメージを持たれる方が多いと思うんです。

有野:そうやなぁ。伝えたとしても、「なんや! もう死ぬと思ってんのか!」って怒られたらとか考えたら、面倒な感じ。せなあかんとは分かっていても、なんとなく敬遠してしまう感じはありますね。うちの奥さんとも、「やっておいたほうがいいね」って話はしてるんです。まずはインターネットのIDやパスワードをまとめるところから、少しずつ終活をしようって話をしたら、すぐ「私はできたよ~。あなたも早くやってね」って言われて。それで、「わかった、わかった」なんて空返事だけして、それっきり手を付けていないんです。

井戸:まだ両親も自分も元気なうちだと、どうしても後回しにしがちですよね。ただ、終活は元気なうちにこそやっておくべきこと。病気やケガをしたり、認知症になったりしてからだと、スムーズに進められなくなるからです。日本人の平均寿命はだいたいどれくらいか、ご存じですか?

有野:確か男性は80歳くらい、女性は90歳くらいでしたっけ?

井戸:そうですね、いまは男性が81歳、女性は87歳になっています。では、「健康寿命」はいくつくらいだと思います?

有野:平均寿命じゃなくって、健康寿命? その言葉がよくわからへんです(笑)

井戸:健康寿命は、健康上、自分一人で日常生活を送ることができる年齢。裏返すと、健康寿命を過ぎると、日常生活をおくる上で何らかの不自由が生じる年齢でもあります。現在は、男性の健康寿命が72歳から73歳くらい。女性は75歳となっています。

有野:なるほど。寿命は80歳とはいえ、ずーっと健康か、って言うとそう言うわけでもない。年齢が上がるほどに、病気だったりケガだったり、身体に何らかのトラブルを抱えていて、介護が必要とか、自分一人で生活できなくなるってことですね。寿命より重要ですね、健康寿命か。

井戸:平均寿命から健康寿命を引くと、「健康上の問題で、日常生活に何らかの不自由が生じている」という期間、つまり介護などのサポートが必要な年数がわかります。男性はおよそ9年、女性はだいたい12年ですね。

有野:意外と長いなぁ〜。そんな、9年も家族に介護されなあかんのは気持ち的に嫌ですね……。自分でも身長180cmのお爺さんは邪魔やなーって思う。書類物とかの迷惑だけでもかけないようにしておきたいです。

井戸:この間、体の動きが不自由になるだけではなく、認知症が発症するリスクも高まります。認知症の発症を抑えるには運動が大事なのですが、日常生活に不自由が生じるレベルで身体に問題が起きているので、運動もできないわけですからね。

有野:確かに、生活さえできへんのに、ジョギングができるわけないもんなぁ。走りに行っても帰ってこられへんかも。「ここどこや?」って。

井戸:認知症が発症してしまうと、銀行預金の引き出し、証券会社での株や投資信託の売却、自宅の売却や修繕、相続税対策といった「契約行為」ができなくなるんですよ。

有野:え~、そうなんですか!? 家族が暗証番号さえ知ってたら、必要なお金やし「もらうで」って伝えて引き出せそうなものですけど。

井戸:それ、やられている人もいるかもしれませんが、本当はダメなんです!

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