はじめに

遅くても還暦ころまでには「終活」をしておくこと

井戸:有野さんは、現金や預金以外に、不動産や美術品といった、相続の対象になるものはお持ちですか?

有野:ゲームソフトやフィギュアが大量にありますね。あ、あとグラビアの写真集が400冊くらいあります(笑)

井戸:そうなんですか! グラビアがお好きなんですね。

有野:これだけ持ってると趣味が仕事になりました(笑) でも、全部売れるかわからないですけど、なかには本人のサイン付きのものもあったりするので、価値が高いものもあると思うんですよね。でも、「有野さんへ」って書いてもらってるから、売るわけにもいかない。

井戸:もし、有野さんの身に何かあって、お子さんたちが大量のグラビア写真集を目の前にしたとき、「父ちゃん、こんなに持ってたんや……どないしよ」となってしまいますよ。

有野:確かにそうですね。しかも娘なので、もし自分の父親が山ほどグラビア写真集持ってて、それ処分せなあかんってなったら「私、嫌だよ」「私だって嫌よ、恥ずかしい!」って喧嘩しそう(笑) う〜ん、ここも迷惑かけられへんから、早くなんとかしないとなー。

井戸:「人生、何が起きるかわからない」などとよく言われますよね。人は、実際に自分の身に起きてからそれに気付くものですが、遅くても還暦を迎えるころまでには、「終活」を一度やっておくこと。それが親の責任というものです。もし、お子さんがいらっしゃらない場合でも、自分が死んだ時、配偶者が亡くなられた時、家族や知人に迷惑をかけるのを避けるために、終活は必要です。

有野:オトンの件で身に染みているはずなのに、銀行口座も複数あるし、このままだと面倒をかけてしまいそうですね……。通帳があれば金融機関はわかるけど、ネットバンクだと紙の記録がないから、きちんと伝えておかないと、あるかないかもわからへん。あることは伝えておかないと、もったい無い。それは嫌やから終活は早くしないと! 認知症の事は考えたこともなかったです。

井戸:親が亡くなられたり、認知症を発症してしまったりした場合、家をどうするのか、介護が必要になった時はどうするのか。自分で介護をするなら、仕事はどうするのか。実家の収入状況はどうなっているのか……など、前もって考えておく必要があるんです。考えておかないと、いざそれが起きた時、何をすればいいのかわからず、パニックになりかねません。

有野:先生の言う通りですね。オトンが亡くなった時、「あ~、聞いておけばラクやったのにな」って思いましたもん。なんでしてなかったんやろ、って家族みんなで後悔しました。

井戸:還暦は「暦(こよみ)が還(かえ)る」という意味で、干支が一回りして生まれ変わることを祝う行事ですが、遅くてもその還暦を迎えるころまでには、一度自分の人生を整理して、子どもや孫など次の世代が困らないように「終活」をしておくべきです。自分はもちろん、両親がしていない場合は、終活をするように話をしていくことが大事ですね。

有野:なるほど、本当にその通りやなぁ……。オカンも僕も全く終活をしていないし、今回の授業を聞いて、急に焦ってきました。

井戸:「終活」をきちんとやろうと思うと、やることがたくさんあるんです。いきなり「終活しなきゃ!」って前のめりになると、途中で心がくじけてしまうかもしれませんし、焦る必要はありません。一歩一歩階段を上がれるよう、まずは終活に向けた心構えをしていきましょう。

有野:心構えかぁ。とりあえず今日、帰ったらサイン付きとそうじゃないグラビア写真集を分けるところから、一歩一歩始めようと思います!

井戸:そこからなんですね(笑)

有野:自分が死んで娘たちに見られる時のことを考えると、急に恥ずかしくなってきたんです(笑)

次回(7月11日配信予定)は「終活で整理しておくべきこと」について聞いていきます。

有野晋哉
1972年2月25日生まれ。大阪府出身。テレビやラジオ、CM、雑誌の連載などマルチに活躍。コンビで公式YouTube「よゐこチャンネル」も開設しており、幅広い世代から支持を得ている。自身が50歳を迎えた2022年に、お金にまつわる知識の大切さに目覚め、日々勉強中。

井戸美枝
井戸美枝事務所代表。神戸生まれ、関西大学社会学部卒。1990年に社会保険労務士の資格を取得し、神戸市内に社会保険労務士事務所を設立。1993年にはAFPの資格を取得。1996年にはCFP認定者となり、社保労務士に加えてFP業務も展開する。生活に身近な経済問題や年金・社会保障問題を中心に、新聞や雑誌で連載を持つなど幅広く活躍。「難しいことでもわかりやすく」がモットー。著書に『親の終活 夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!増補改訂版』(日経BP)ほか多数

ライター:新井奈央

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