はじめに

相続で引き継いだ山林や農地、親が生前に住んでいた空き家など、「思い出は詰まっているけれど、今は何も使っていない」不動産は、意外と多くの人にとって身近な財産の一つです。

これらの不動産は、使っていなくとも固定資産税の支払いや、草木の除草伐採などの維持管理が避けられず、様々なリスクが年々積みあがっていく、資産価値よりも負債の大きい「負動産」と化していることも少なくありません。そして、負動産がかかえる問題は、負債的要素をもっていることだけでなく、「売りたくても売れない」という、八方塞がりに近い側面も持ち合わせています。

しかし、実際にはそんな悲観する必要はありません。負動産を売却処分したいと思ったときに、見落とされがちな「2つのこと」を実践することで、誰でも負動産問題から卒業することができるようになります。

今回は、その「2つのこと」について見ていきたいと思います。


負動産を追い込む、厳しい現実

負動産は、先に述べたような、所有者に対してかかる出費などを伴うだけでなく、以下のような厳しい現実にも直面しています。

(1)資産価値の低下が進行
負動産を放置することにより、建物は荒廃し、土地には草木が生い茂っていくため、何かに活用しようにも、整備には相当な費用がかかります。その放置期間が長いほど、その費用はますます膨らんでいくために、資産価値は反比例的に低下していく、負のスパイラルに陥りがちです。

(2)著しい供給過多
負動産には、著しい供給過多の背景もあります。これは、農業や林業といった第一次産業の衰退により、農地や山林に対する土地需要が低下し続けていることや、地方過疎化などの背景から地方空き家が急増していること、”モノは持たない”意識が高まった生活スタイルの変化などによって、不動産を欲しい人よりも、手放したい人の方が圧倒的に上回っていることが原因です。

(3)売却処分できる手段がない
通常、不動産を売却するとなれば、その物件がある地元の不動産会社や、個人的に付き合いのある不動産営業マン等に相談して、売却を依頼することが一般的です。

一方、負動産となると、その手段が使えないことがほとんどです。なぜなら、不動産会社であっても、負動産を買ってくれる人の情報を持っておらず、「手伝えない」と判断されることが少なくないためです。

この理由のほか、負動産の場合には高値で売買が成立する確率が非常に低いため、不動産会社の手数料収入も限定的となり、「通常の不動産よりも、成約までに時間や労力がかかるのに、手数料は安い」案件として、赤字になってしまうことも珍しくありません。そのため、積極的に扱いたくないという心理が働いてしまうことも一因です。これらの背景から、負動産の相談をしても、門前払いをされてしまうことも多々あります。

実は、負動産の買い手は多い

負動産が置かれた現実を見てみると、「もう為す術はない」ように思えます。しかし、筆者がこれまで数千件近い負動産と出会い、取引してきた経験から、一つの大きな発見がありました。それは、「負動産の買い手は多い」という事実です。

・ソロキャンプ用地として山を買いたい
・山菜やキノコ採取のために山を買いたい
・週末の趣味として、ボロ家を買ってDIYしながらセカンドハウスを持ちたい

など、個人需要は予想以上に旺盛です。

では、そういった”負動産の買い手”はどうしているかというと、「負動産を買いたいのに、なかなか情報が出回っておらず、買いたくても買えない」と苦戦しています。つまり、負動産が増えているという現実がある一方で、買い手の視点では、負動産が見つけられていないという、不思議な現象が起こっています。

これは、先に挙げたような、売り手と買い手の橋渡し役になる不動産会社が少ないこと等を背景に、物件情報が浸透していないことがおもな要因と考えられます。

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