はじめに
投資の基本は「長期」「積立」「分散」「低コスト」
今回は、老後資金など、10年以上先の使わないお金を貯めるための方法にフォーカスしてお話します。
10年以上先の使わないお金を貯めるには、投資商品を活用することがポイントですが、投資にはリスクがつきものなので、安定的にお金を増やすには投資の基本である「長期」「積立」「分散」「低コスト」を実践することが大切です。
●長期投資
長期投資は、数十年にわたる長い期間で投資を行うことです。短期投資では、一時的な値動きでお金を減らしてしまう可能性があります。しかし、長い期間で投資すれば、世界経済の成長とともに利益を得られる期待ができます。また、投資を長く続け、運用で得た利益や利息を再び投資すると、その利益や利息が新たな利益を生み出す「複利効果」が得られます。
●積立投資
積立投資は、定期的に一定額ずつ投資をすることです。投資先の商品の価格は上下に変動します。値動きのある金融商品を毎月一定額ずつ購入することで、商品の価格が安いときにはたくさん買い、高いときには少ししか買わなくなるため、「ドルコスト平均法」の効果が得られ、平均購入単価が自然と下がります。その後、少しの値上がりでも利益を出しやすくなります。
●分散投資
分散投資は、「値動きの異なる」資産に投資することです。こうすることで、ある商品が値下がりしても他の商品の値上がりでカバーすることができ、資産全体としての価格変動リスクを減らせます。たとえば、株式と債券は逆の値動きをするため、両方持っておけば、片方が値下がりしてももう片方が値上がりするため、大きな値下がりを減らせるというわけです。
●低コスト
投資にかかる手数料は安い方が有利。投資の成果は投資してみないとわかりませんが、投資にかかる手数料は安いものを自分で選べます。なるべく手数料の安い方法で投資することが、利益を最大化することにつながります。
長期、積立、分散、低コストを兼ね備え、かつ税制優遇の恩恵も受けられるのがNISAとiDeCoです。ですから、投資を行う時には、NISAとiDeCoの活用を優先させましょう。
年代別資産形成戦略のポイント
ここからは、年代別にNISAとiDeCoの活用ポイントを見ていきます。
●20代の資産形成のポイント
20代は、時間と複利を味方につけて、効率よくお金を増やしていける時期です。優先して活用したいのがつみたてNISA(新NISAのつみたて投資枠)です。運用益を非課税にしてお金を増やすことを目指します。節税効果はiDeCoのほうが大きいのですが、iDeCoの資金は60歳以降になるまで引き出せないという「資金ロック」があります。ですから、iDeCoを優先してしまうと、これから控える結婚、出産、子育て、住宅購入、余暇などの他のライフイベントにお金を使えなくなってしまうからです。
また、iDeCoでは毎月口座管理手数料がかかります。毎月の積立金額が少ないと積立金額に手数料が占める割合が増えてしまうため、NISAよりも投資の効率が悪くなってしまいます。ですから、つみたてNISA・新NISAのつみたて投資枠を活用しましょう。
20代の独身の場合は、お金の貯め時です。1年目は月5,000円、2~3年目は月1万円、4~7年目は月3万円、8年目以降は月5万円という具合に投資金額を少しずつ増やし、積極的に投資をしていきましょう。この場合、元本の総額は2,154万円です。年3%だと3,881万円、年5%だと6,055万円、年7%にいたっては9,812万円と、1億円近い金額に増加する見込みです。投資資金が少ないうちは少額のスタートでも、徐々に投資金額を増やすことで大きな金額に育つ期待ができます。
●30~40代の資産形成のポイント
30~40代の現役世代の資産形成のポイントも、基本的には20代と変わりません。30~40代も、まだまだ教育資金や住宅購入資金、余暇資金などにお金がかかる時期です。
とはいえ、結婚していて、子どもがいる場合、子どもが小さい時期は、お金の貯め時なので、積極的に資産形成を進めたいところです。
仮に毎月5万円を5%の利回りで30年間運用することができれば、約4,161万円になります。途中でライフイベントに必要な資金が発生した場合、2024年から始まる新NISAでは、資産の一部を売却して活用する方法が考えられます。新NISAは売却枠が復活するので、翌年から新たに非課税での投資が始められます。もしも新NISAのお金を使わなかったとしても、そのまま運用を続けることでやがて必要になる老後資金にも切り替えることができます。
毎月の掛金に余裕があったり、子どもを預けて共働きができたりするのであればiDeCoも併用しましょう。30代も後半あたりになると、給与もだんだん上がってくるでしょう。所得税の税率は所得が高くなると段階的に税率が上昇します。所得税率が上がると、iDeCoの節税効果も高まります。iDeCoで貯めたお金は60歳以降にならないと引き出せませんが、毎年節税できる金額も増やせることになります。これを貯蓄やNISAの投資資金に回すことで、お金が貯まりやすくなります。夫婦ともにiDeCoを利用すると節税の効果はさらに高まります。