「貯蓄ゼロ」世帯が増える中での投資の考え方
世論調査から考える資産運用とは
日本銀行が事務局を務める金融広報中央委員会のアンケートによると、「金融資産をもっていない」世帯、いわゆる「貯蓄ゼロ」世帯が増えています。貯蓄ゼロ世帯が増えているものの、老後の生活について「心配である」と回答した世帯は8割程度と高水準で推移しており、老後の生活に不安を感じていないわけではないようです。しかしながら、「現在生活設計を立てていないし、今後も立てるつもりはない」との回答がじわりと増加しています。老後に不安があり、資金を積み立てる必要を感じながらも、切迫感に乏しく、金融資産の保有につながる行動には至っていないと考えられます。
ファンダメンタルズ相場を打ち砕く“次の投機材料”は何か
米5月雇用統計で投機筋は一掃
前回の筆者記事で、マーケット関連の各種報道のトーンが変わり始めたようだとお話しましたが、世界貿易戦争勃発の可能性を指摘していた円高論者たちは1ドル=111円台というル円の回復を受けて一掃されました。引き続き、米国の保護貿易姿勢やドナルド・トランプ大統領の発言に対する懸念は残っているものの、米国の経済指標が非常に好調であることから、市場の目は米国のファンダメンタルズと利上げに移ってきていると思われます。この先に“波乱の芽”は潜んでいるのでしょうか。そして、それが顕在化するとすれば、Xデーはいつなのでしょうか。
上昇続いた「原油価格」、これから先の適正水準は?
一時、3年半ぶりの高値に
世界的な指標となっているWTI原油価格は2017年6月の1バレル=40ドル台前半から、ほぼ一貫して上昇基調を歩み、5月上旬には70ドルを超えました。私たちの身の周りでも、ガソリン価格が顕著な上昇を見せるなど、原油高を実感する場面が増えてきているように思います。ここまで原油相場を押し上げてきた原動力とは、いったい何だったのでしょうか。また、この先の原油相場はどのような展開を見せるのでしょうか。原油価格上昇の背景を整理するとともに、今後の原油価格の見通しについて考えてみます。
1ドル=111円台、具現化しつつある麻生財務相の発言
日米金利差は節目の3%を突破
5月に入り、ドル円相場は一時1ドル=111円台まで円安ドル高が進んでいます。この動きは円ではなく、ドル主導といってよいでしょう。つまり、ドル全面高という環境下で他の通貨同様、円が売られたという解釈が腑に落ちます。では、ドルが買われた理由ですが、単純に“金利差”と見るべきでしょう。3月29日、麻生太郎財務相は国会の答弁で、「これまでの歴史を見ると、米国との金利差が3%に達すると、必ずドル高円安に振れる。例外は1つもない」との見解を示しました。そうした状況が具現化しつつあるようです。
貿易摩擦問題は“オオカミ少年”で終わる?
米中の貿易摩擦問題を考える
米中の貿易摩擦問題をめぐるドナルド・トランプ米大統領の発言を振り返ると、イソップ寓話に出てくる「オオカミ少年」を思い起こさせます。貿易戦争(注1) への進展を連想させる発言を繰り返しながらも、一方で、深刻な事態には至らないような動きも垣間見えます。当初はこの問題に衝撃を受けた市場関係者も、実際には深刻な事態にならないのではと思い始め、次第に過激な発言に慣れていく状況が「オオカミ少年」と類似しているようです。トランプ大統領の当面の目標は、11月6日の米中間選挙(注2) で勝つ(共和党が勝利する)ことでしょう。そのため、「中国によって米国内産業が痛めつけられ、貿易赤字が膨らんでいるほか、知的財産権なども侵害されている。よって、国内産業を保護する姿勢を強めれば、共和党支持が増えるだろう」と目論んでいる可能性はあります。3月1日には、中国製品を念頭に鉄鋼とアルミに追加関税を課す方針を表明。3月22日には、最大600億ドル相当の中国製品に制裁関税を課す大統領令に署名。4月5日には、1,000億ドル相当の中国製品への追加関税の検討を米通商代表部(USTR)に指示するなど次々と強硬策を打ち出し、中国
くすぶる貿易戦争の“火種”はドル円相場をどう動かす?
報道トーンに変化の兆し
マーケット関連の各種報道のトーンが変わり始めたようです。世界貿易戦争勃発の可能性を指摘していた人たちがいなくなったわけではありません。その可能性を指摘するコメントがフェードアウトしてきたためです。「今年は二度と1ドル=109円台までのドル円の上昇はない」と主張していたにもかかわらず、その水準を回復したことを受けて、コメントに困っているのかもしれません。
ドル円相場は「反発局面」に入ったのか
年初からの円強気ムードは一巡
新年度に入った後のドル円相場を見ると、潮目の変化の兆しがうかがえます。ドルの本格的な反発という雰囲気はまだ感じられませんが、少なくとも円高の勢いはかなり減衰しています。足元の為替市場では何が起こっているのでしょうか。具体的に検証してみたいと思います。
米中通商問題、「天然ガス」が戦争回避につながりうる理由
どうすれば互いの矛は収まるのか
米中通商問題の深刻化に対する懸念から、3月以降の世界の株式市場は大きな動揺を見せました。ただ、足元で中国が市場開放の方針を示したことで、安定を取り戻しつつあるように見受けられます。とはいえ、米中間の貿易摩擦が完全に決着したわけではなく、事態は未だ現在進行形の状態にあります。本稿では、誤解を恐れず、最大限に想像力を働かせて、米中通商問題を前進させうる具体的な着地点を探ってみたいと思います。
為替市場は「貿易戦争」懸念を適切に消化できているか
報道やムードに惑わされるな
3月下旬には一時、1ドル=104円台まで円高ドル安が進行したドル円相場。足元は1ドル=107円前後で推移しており、一時のような円高局面は一巡した感があります。では、この先の為替相場どのように見通せばいいのでしょうか。各種の経済指標の動きや米政権関係者のコメントなどから、読み解いてみます。
Eコマース拡大から見える世の中の変化
市場拡大で世の中も変わる?
足元、米国の保護主義政策によって、貿易摩擦懸念が高まっています。しかし、世界経済の密接なつながりを鑑みると、貿易戦争にまで発展する可能性は低いのではないでしょうか。紆余曲折はあるとみられますが、基本的に世界経済が順調に成長するという見通しは継続と考えています。それに伴い、商取引も拡大をしていくでしょう。中でも急成長をみせるEコマース(EC、電子商取引)市場は、今後も前年比2ケタの高い成長が続くと予想されます。背景には、「スマートフォンなどのデバイスの普及」「物流システムの充実」「決済機能多様化への対応」「オンラインショッピングのインフラ整備」などがあると考えられます。したがって、Eコマースの拡大は単なる消費行動の変化の表れというだけでなく、世の中の変革を象徴する動きであるともいえるでしょう。その変革を先導している企業の1つが米国のアマゾン・ドット・コムです。ほかにも、ヒト、カネ、モノ(物流)を巻き込んだ経済圏をつくる巨大企業が米国や中国などで多数出てきています。これらの企業が及ぼす影響について、EC拡大という観点から見てみたいと思います。
1ドル=104円台に突入、円買いトレンドに乗るべきか
足元のドライバーは「リスクオフ」
円高ドル安基調になかなか歯止めがかかりません。3月23日には、いよいよ節目の1ドル=105円を割り込んでいます。最近の円高ドル安の背景を確認しつつ、今後の展望にも触れたいと思います。
アマゾンvsアリババ、「アジアIT陣取り合戦」の行方
急成長する中国インターネット企業
人がいないコンビニで買い物し、レストランで食事を楽しむ――。未来都市として描かれるような生活を手軽に楽しめる世界が、急速に実現に向かっています。米国のアマゾン・ドット・コムは1月、レジなしの無人コンビニ「Amazon Go」1号店を米国・シアトルに開店しました。これに先駆けること半年前、中国インターネット大手アリババ(阿里巴巴)も2017年7月に無人スーパーを開店。さらに、顔認証レストラン、無人レストランと、最先端IT技術を投入した店舗を次々に展開しています。アマゾンとしのぎを削る形で急成長を続けている、中国のインターネット企業大手。これまでの事業拡大の歴史を振り返りながら、今後の流れを展望したいと思います。
雇用統計を無事通過、「ドル円相場」はどこに向かうか
投機的な動きは沈静化?
2018年のドル円相場は波乱の幕開けとなりました。1月9日、日本銀行が通常の資金供給オペで国債買入額を削減したことで、市場には「日銀、早期緩和解除」の論調が強まるとともに、円高ドル安ムードが一気に広がりました。その後、1月24日には、スティーヴン・ムニューシン米財務長官から「ドル安容認」と解釈されたダボスでの発言が世界を駆け回り、円高ドル安をさらに加速させることとなりました。黒田東彦・日銀総裁は「日銀、早期緩和解除」を否定。ムニューシン財務長官も1月30日の米上院銀行委員会公聴会で、ドルに関するダボスでの発言はメディアが誇張したものであり、間違ってもドルを押し下げる意図はなかったと証言しています。しかし、市場は聞く耳を持たず、各種コメンテーターたちの「表向きだけの否定」「黒田総裁は心の中では早期緩和解除をしたくて仕方がないはずだ」「ムニューシン長官はドル安にしたくて仕方がないはずだ」との発言を信じているかのような動きをしています。市場という生き物は、いわば「思い立ったら猪突猛進」となり、なかなか歯止めがきかないようです。
相場格言「落ちてくるナイフは掴むな」の後はどうする?
底値で拾う2つの投資法
相場格言は「落ちてくるナイフは掴むな」と教えています。「上げ百日、下げ三日」と言われるほど、下落相場は速いのが普通です。よって、今日が底値だと思って買っても、数日違ったら大きな損失になることもあり得ます。実際、2月のNYダウ平均株価は1日で1,000ドル以上も下落した日が2度ありました。その前日に投資していたらと思うと、ゾッとします。このゾッとした感じや「落ちてくるナイフは掴むな」という相場格言は、実生活でも炊事場で包丁を床に落とした経験のある人なら実感が湧くでしょう。ただし、落とした包丁が床から跳ね返って宙を舞っている間も危ないことに変わりはありません。相場でも株価がリバウンドしてきてしまうと、買いにくいものです。実際、NYダウはかなり戻していましたが、最近の4営業日で1,000ドル以上も下落してしまいました。そこで底値で投資する方法が必要になります。“床に突き刺さったナイフ”を見つける方法です。今回は2つの方法を紹介します。
昨年終盤から続く「円高・ドル安トレンド」の“正体”
長期金利差に逆行するドル円相場
ドル円相場の値動きを予想するうえで、日米の長期金利差は重要な要素であり、少なくとも両者の連動性はここ数年間、高いものがありました。しかし、昨年11月以降、日米長期金利差の拡大に逆行する形で円高・ドル安が続いています。この背景には何があるのでしょうか。また、今後もこの傾向が続くのか、探ってみたいと思います。
上向き目線は維持? 米国株の見通しに変更は必要か
株価急落から2週間が経過
良好な新年のスタートを切った1月とは対照的に、2月の世界の株式市場はいきなり米国株の急落に遭遇しました。2月2日に発表された米雇用統計を受けて、NYダウ平均株価は前日から665ドルも下落し、株式市場に動揺をもたらしました。その後も乱高下を繰り返した米国株は、NYダウが1月26日の高値(2万6,616ドル)から、2,700ドル以上も値下がりする場面がありました(終値ベースでの比較)。足元の株価は昨年末水準を再度上回ってきていますが(年初来の騰落率はプラスに転換)、今回の相場変調をどうとらえ、今後の相場をどう予想したらよいのでしょうか。これまでの相場下落の経緯とこの先の展開を、改めて整理したいと思います。