はじめに

稀代の詐欺師、ポンジ

ではこのような詐欺手法のことを、どうしてポンジスキームと呼ぶのでしょうか。

ポンジスキームのうちスキーム(scheme)の方は、日本語でもよく聞く表現ですね。これは「大きな枠組みを伴う計画」を意味する言葉で、例えば事業スキーム・連携スキームなどの複合語もよく登場します。しかしながらポンジスキームでいうスキームには「陰謀」や「たくらみ」の意味があります。

一方のポンジは、実在の詐欺師カルロ・ポンジ(Carlo Pietro Giovanni Guglielmo Tebaldo Ponzi)の名に由来します。

1882年にイタリアで生まれ、1903年に米国に移住。1919年に国際返信切手券を対象とする投資ビジネスを立ち上げました。彼は「90日間で40%の利回り」(具体的数字には諸説あり)などと宣伝。その結果、数百万ドルの出資を受けることに成功します。しかし彼は出資金を一切運用せず(のちに国際返信切手券の購入に充てた金額はわずか30ドルだったことが判明している)、新しい出資者から得た出資金を、以前からの出資者への配当に充てていました。

元祖スキームの破綻

そんななか米国の金融誌『バロンズ』が彼の投資ビジネスに根本的な瑕疵があることを指摘します。というのも、国際返信切手券への投資でポンジが喧伝する運用益を確保するためには、当時発行されていたすべての国際返信切手券の6倍の量が必要だったのです。

この報道がきっかけとなり、彼の投資ビジネスが破綻。騙された多くの家庭が破滅に追い込まれ、ボストンにあった6つの銀行も破綻してしまいました。結局ポンジは詐欺罪で有罪となり、刑務所に入ることになったのです。

それにしても犯罪行為の由来が人名であるとは、なんとも不名誉な話ですよね。実は言葉の世界にはこの種の命名が時折現れるもの。私的制裁の暴力を意味する「リンチ」(lynch)には実在人物を由来とする説がありますし、出来レースを意味する「八百長」(やおちょう)は明治時代に実在したと思われる八百屋の店主・長兵衛が由来とされています。

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